【2021.11.01更新】
文・有島博志
“秋の夜長に～”という言い回しがある。この時期、夜の時間が一番長く、その時間をどう過ごすか、というような意味でよく使われる。“秋の夜長にホラー映画観賞”とも言われることがある。ALKALINE TRIOの来日がかつて、タイミング的に偶然だったのだけど2003年夏にあったことから、当時発売直後だった4thアルバム『GOOD MOURNING』を聴いたとき｢もしかしたらホラー映画好きかも｣と思えるところがあったので、マット・スキバ(vo,g)に聞いた。2003年11月30日発行のGrindHouse magazine Vol.21に“Bit of our taste…”の切り口で掲載した。ここに再公開する。
text by Hiro Arishima
translation by Izumi Kurihara
photo by Shigeo Kikuchi
ラウドロック界にホラー映画好きは多い。ALKALINE TRIOのマット・スキバもそう！！
今年から来春にかけて例年になくホラー映画が豊作で、注目作が目白押し。前号で紹介した『フレディ vs ジェイソン』もそうだし、ロブ・ゾンビは初監督/脚本作品『HOUSE OF 1000 CORPSES』(日本劇場未公開)が本国でヒットしたことに味をしめ、｢また映画撮るゾー！！｣と鼻の穴全開で息巻いてるともっぱらの噂(笑)。純粋ホラーじゃないけど、P21の『アンダーワールド』もホラー好きには響く作風だ。さらに来年(2004年)、スプラッターホラーの経典との誉れ高い『テキサス・チェーンソー/THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE』のリメイク版、鬼才サム・ライミ監督の新作『ブギーマン』が順次日本劇場公開予定。ホラー映画ファンにはたまらない敷き到来と言えるだろう。でだ、今春新作『GOOD MOURNING』を出し、サマソニ03で再来日したパンクロックバンド、ALKALINE TRIOのマット・スキバ(vo,g)は知る人ぞ知るホラー映画好き。それは新作のジャケやインナーのデザイン(デジパック裏には棺桶が3つ)を見ればわかるし、新作収録曲“We’ve Had Enough”を聴いただけで明白だ。
｢“なぜホラー映画が好きなの？”って訊かれるけど、うまく答えられないんだよね。人それぞれなにか特定のものに惹かれる傾向があるじゃない？ それに、なにか自分と通じるものを感じてさ。それがオレにとってのホラー/恐怖映画なんだと思う。音楽を作り、リリックを書く上で、その手の映画からの影響は大きい。スゴくインスパイアされてる。オレの場合は、特に古いホラー/恐怖映画からの影響が強いんだよね｣とマット。
で、そんなマットに大のお気に入りで、みんなにもお勧めのホラー/恐怖映画ベスト3を挙げてもらった。まずは、まさに年代ものだ、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年公開)。名監督ロマン・ボランスキー作で、ホラー映画ブームの走りとなった異色作として有名だ。悪魔主義者の儀式で、悪魔の子どもを産ませられるという、衝撃的な内容が当時話題をさらった。
｢スゴく神聖さとインテリジェンスを感じる映画さ。原作もいいし、映画そのものもよく造られてる｣とマット。
次は『オーメン』(1976年公開)。これまた有名&人気作品で、シリーズ化され第3弾まで続いた。ヨハネ黙示録に出てくるハルマゲドン(最終戦争)にヒントを得て製作され、悪魔の子ダミアンの名や、悪魔の数字“666”は、この映画から一般化した。
｢ガキの頃、バカなことばっかりやってるから母親から“リトルモンスター”って呼ばれてた。だからダミアンに相通じるものを感じるんだ。オレの変形っていうか｣とは本人の弁。
そして、『サスペリア』(1977年公開)だ。イタリアンホラーの最高傑作で、ホラー映画作家ダリオ・アルジェントの名を一躍高めた作品でもある。イタリアン・プログレバンド、GOBLINの不気味な音楽もストーリー、大きく盛り上げる。けっこう血ノリ度も高く、｢必見だね。少女が100年以上も生きた魔女に変わってしまうっていうストーリーで、黒魔術っぽい要素も入ってる｣
あとホラーじゃないけど、マットは番外編として故・深作欣二監督の衝撃作『バトル・ロワイヤル』(2000年)も挙げた。
｢今病的に気に入ってる作品で、スゴくパワフルな作品さ。決して楽しい映画じゃないけど必見だよ｣とマット。
“秋の夜長にホラー映画観賞”と言うには時期的には少々ズレるけど、まだ夜が長い日は続くから、どう、“冬の夜長にホラー映画観賞”ってのは？上記3作品を観れば、ALKALINE TRIOをこれまで以上に身近に感じてもらえるだろうし、さらに楽しんでももらえると思うしね。
『GOOD MOURNING』はALKALINE TRIOの作品群のなかで、個人的に一番好きな作品だ。未聴の人は聴いてみてほしい。ホラーチックな“We’ve Had Enough”のMVも製作されてる。
2002年のハロウィンライヴのフルセットも公開されてる。これまでの流れで観てほしい。
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