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【2020.11.23更新】

文・有島博志
写真・マイカ・スミス

『DIAMOND EYES』を引っ提げての再来日での、チノ・モレノのインタヴュー!

元QUICKSANDのセルジオ・ベガ(b)がチ・チェンの後任として正式にDEFTONESに迎えられた後に発売された6th『DIAMOND EYES』(2010年)。そのワールドツアーの一環で2011年2月に4年ぶり4度目の来日公演が東京ワンオフオンリーで実現した。開演前に会場のSHIBUYA CLUB QUATTROのドレッシングルームでチノ・モレノ(vo)に話を聞いた。ほぼ全文掲載だ。

Photo by Micah Smith

――日本にくるのスゴく久しぶりだけど、今はアジアツアーの最中だね。新作で6th『DIAMOND EYES』発売後のツアーはここまでのところどう?
「うん、そうだね、スゴく久しぶり。ツアーは最高さ。新作が出てからバンドはスゴくうまくいってる。ここ2年間は厳しいときもあったけど、今はみんなの心がいい感じにつながってて、一緒に音楽をやれることをみんなで楽しんでるよ」
――とても痩せたよね?
「毎日汗をかいてるからね(笑)。走ったり、ハイキングしたり、自転車に乗ったり、スケボーしたりしてるよ」
――お金のかからない健康的な痩せ方だね(笑)。
「うん、まさにその通り。キミがさっき言ってたように、オレもだんだん年をとってきてさ。健康でいたいし、気持ちよくいたいから」
――体重を落としたことは当然ステージでも役立つだろうし。
「ああ、もちろんさ。オレはもっとよく歌えるようになったし、体力も衰えてないし、とかく気持ちがいいんだよね」

Photo by Micah Smith

――1st『ADRENALINE』(1995年)や2nd『AROUND THE FUR』(1997年)の頃にインタビューしたとき、「歌い方を知らなかったから叫ぶしかなかったんだ」と言い衝撃的だったんだけど、そのとき歌い方を知らなくても歌詞は書いていたわけじゃない?っていうことはあの頃は歌うということより歌詞を書く、ということの方がわかってたっていうこと?
「歌詞を書くのも難しいんだ。だけど新作に関して言えば、オレにとって少しやりやすいやり方に変えてみたんだ。それは今までは先に音楽が出来て、それに歌詞を後から乗っけるやり方だったんだけど、今回はそれを同時進行でやってみたんだ。曲を作ってるときに一緒にメロディーも作り、言葉も乗っける。その方が全然やりやすいんだよね」
――たとえば歌詞の言葉って、どういうときに思いつくの?
「メロディを作ってるときに、言葉がぽんぽん出てくるんだ。その言葉のラインをいくつか作って、後で聴きながら整えていくんだよね。うまくいってるよ」
――たとえば食事をしてるときとか、シャワーを浴びてるときとかにふと言葉が浮かび、それをメモったりしておくなんてことはある?
「イヤ、それはないな。完全にその場その場で歌詞を作り上げてる。オレはこれまでに一度も歌詞を先に書き、“よし、こんなのが出来たよ”ってやり方はやったことがないんだ。音楽ありきで歌詞が出てくる、そして言葉の意味がちゃんと通るようにする。その逆はオレには出来ないんだ」
――曲を作るとき、たまに苦労することってあると思うんだけど、歌詞がなかなか浮かばなくて壁にぶつかる、なんていうときもある?
「今回は運よくそんなこともあまりなく、ごく自然に出てきた言葉で歌詞がつながっていったんだけど、過去2作品『DEFTONES』(2003年)、『SATURDAY NIGHT WRIST』(2006年)では歌詞を書くにあたり時間を取りすぎて、考え込んでしまった結果、スゴい苦労をしたんだ。なにかを書いては消し、書いては消しの繰り返しの状態にハマってしまったんだ。音がその場その場でインスピレーションを与えてくれる。そのやり方だとうまくいくんだ」
――新作を含めて今までの作品のなかで自分がもっとも気に入ってる歌詞とは?
「いくつかあるけど、そーだな~、”Digital Bath”(3rd『WHITE PONY』/2000年/収録曲)のアイディア、ストーリーは好きかな。そのときオレの頭がどんなふうになってたかは覚えてないけど、後から聴いてみて自分でも驚くくらいにいい出来だと思ったんだ。普段、オレの歌詞には物語っていうのがあんまりないんだけど、”Digital Bath”には物語がある。どんな感じで書いたかはあんまり覚えてないんだけど、これも自然に出てきた歌詞だったよ。今でもこの曲は1番のお気に入りかな」
――これまでの話のなかに”自然”っていう言葉がたびたび出てきてるけど、歌詞に限らず、物事って自然に出てくるのが1番大事だよね。
「うん、同感だね。言葉も音楽も両方ね。バンドで音楽をやってて1番楽しいことって、これなんだよね。自然な流れでの“無からの創造”。だけど、同時に“無からの創造”がどんなに挑戦してもうまくいかないときが一番苦しいときでもあるんだ。オレたちはチが事故に遭ってから目が覚めたんだと思うんだけど、自分たちが出来ることに全神経を集中させて仕事をするようになったんだ。そして自分たちがこうして音楽を出来ることの喜びを再び噛み締めてやれるようになった。酷い出来事があって気づくなんてとっても悲しいことだけど、事実、目が覚めたんだよ」
――たぶん曲を作るときってバンド内で「ここはああした方がいいんじゃない?」とか、意見を出し合ったりすると思うけど、歌詞を作り上げてるとき、ほかのメンバーから「この歌詞のイメージと、曲のイメージがなんかしっくりこないな」とか言われたりする?
「いいや。普段はみんな、オレに任せっきりだったんだけど、新作のレコーディング中にセルジオがオレのブースにきて一緒にいてくれたんだけど、すごくよかったよ。やっぱりその場その場で、「どーかな?」「いいね~」みたいなやりとりが出来るのっていいよね」
――新作収録曲の歌詞で気に入ってるのは?
「そーだな、“Risk”が気に入ってる。自然に出てきた言葉なんだけど、チのことと重なってる。意識してチのことを歌おうとは思ってなかったんだけど、後で聴いてみたら背筋がゾクッとしたくらいの出来だったよ」
――人によっては、タトゥーがその人の歴史、もしくは日記のような意味を持つって言うじゃない。歌詞もまた、その人のそのときの精神の記録とも言うよね。チノにとって歌詞はそのときそのときの感情が浮き出てくる、違った意味でのこれまでの日記、歴史として捉えることが出来る?
「その通りで間違いないね。さっきも言ったけど、そのときのことは覚えてないんだけど、後で聴き返すと、完全にそのときの自分の状態を表してることに気づく。オレたちのすべての作品に言えることだよ。たとえば、こないだ“Battle-axe”(4th『DEFTONES』/2003年/収録曲)を練習するのに歌詞を忘れてしまっていたからネットで調べたんだけど、見たら”ワォ、重い”って感じだったよ。精神状態が健康だったからよかったけど、まあこれも自分のそのときの人生のスナップショットなんだって思ったさ」
――チノにとっての歌詞とは?
「う~ん、絵みたいなものかな。フリースタイルの絵。深く考えないで出てくるもの。考え込まないで出てくるときは楽しんで書いてる。目を閉じて、自由な形でね」

Photo by Micah Smith

ちなみに、ここにあるライヴ写真はSHIBUYA CLUB QUATTROのものではなく、少し前のワシントンD.C.でのものだ。

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