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【2021.05.03更新】

アイリッシュパンクロックバンド、DROPKICK MURPHYSが通算10枚目となる新作『TURN UP THAT DIAL』を発売した。それを祝して、2007年9月30日発行のGrindHouse magazine Vol.44に掲載した取材記事を再公開する。

text by Aska Gonda

通算6枚目のニューアルバム『THE MEANEST OF TIMES』の発売、間近に迫る!!

今年開催されたPUNKSPRINGで熱いパフォーマンスを見せてくれたボストン出身のアイリッシュパンクロックバンド、DROPKICK MURPHYSが、『THE WARRIOR’S CODE』に続く新作を発表。ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンらが出演するマーティン・スコセッシ監督の映画『ディパーテッド』に楽曲が使用されてから新しいファンが増えたとうれしそうに語るDKMのフロントマン、アル・バーに電話で話を聞いた。

ーー今、ボストンは朝の8時だと思うんだけど、こんな時間に取材して大丈夫?
「子供がいるから、家にいるときは朝が早いんだ。6時くらいに起きて、スペシャルバナナドリンクを飲み、犬を外に連れ出したりして、TVの子供番組を観たり、ロックとはかけ離れた生活をしてるよ」
ーー前にNOFXのファット・マイクに朝10時に話を聞いたことがあるけど、記録更新だよ。
「記録に挑戦するつもりは特にないけど、マイクに勝ったんだったら光栄だな(笑)」
ーー新作『THE MEANEST OF TIMES』の発売がもうすぐだね。
「うん、すごく待ち遠しいよ。今回は自分たちが始めた新しいレーベルBorn & Bredからの第1弾リリースだから、いつも以上に興奮してるし、その一方で少しナーバスになってるところもある」
ーー自主レーベルを作ろうと考え出したのはいつ頃?
「ずっと考えてたのかもしれない。EpitaphやHellcatと俺たちの関係はよかったんだけど、俺たちは基本的に人に頼ったりすがりつくのではなく、自分たちの力でがんばってきたし、これからもそうでありたいから、最終的には作品のリリースも自分たちの手で行っていきたいんだ。ただ、レーベルを運営する能力が自分たちにないことはわかってたし、そんな時間や労力があるならツアーをしたいから、これまであまり積極的に動いてはなかったんだけど、流通面などの実務はプロに任せ、クリエイティヴ面では自分たちでコントロールする、メジャー傘下のレーベルという形なら、自分たちにもできるんじゃないかと思って、Hellcatを離れることにしたんだ。結成からもう10年経ったわけだし、DROPKICK MURPHYSの新しい物語を始めてみるのもわるくないかなって」
ーーHellcatのオーナーであるRANCIDのティムは理解してくれた?
「そう思うよ。Hellcat自体、なんでも自分たちでやっていこうと考えて生まれたレーベルだし、RANCIDは言わばその先駆者だからね」
ーーさっき、今回は少しナーバスになったって言ってたけど、自分たちでリリースすることがプレッシャーになってるってこと?
「プレッシャーや責任は、アルバムを出すたびに多かれ少なかれ感じてるよ。レーベルのことはまだ試行錯誤してる状態だけど、その状況を楽しんでもいるんだ。やることが思った以上にあって驚いてるけどね」
ーー新作を最初に聴いたとき、前作以上に強いアグレッションを感じたから、レーベルを始めたことにメンバーがすごく興奮し、いつも以上に気合いが入った結果なのかなと思ったんだけど。
「今回はアグレッシヴなアルバムにしようとか、新しいレーベルだからがんばろうと気合を入れたわけではないんだけど、常に前進していきたいと思ってるから、アグレッションを感じてもらえたんだったら素直にうれしいな。新作の曲作りやレコーディングは、ツアーの合間に進めたこともあり、曲のテーマや全体の流れにバラエティ感があったんだけど、今回はわりと集中的にやったから、前作がいろんなケーキの寄せ集めだとすれば、新作はホールのケーキになってると思う」
ーーいろんな味が楽しめるバラ売りのケーキも捨てがたいけどね。
「もちろん!でも、大きな丸いケーキもかなり魅力的だからね(笑)」
ーーレコーディングが終わる前にヨーロッパツアーが始まってしまい、最終チェックはネット回線を介して行われたらしいね。
「そうなんだ。自分たちが思ってたよりレコーディングに時間がかかり、結局、空港にいかなきゃいけないギリギリの時間までスタジオにいた。だから、最終的なミックスの確認などは、ヨーロッパに到着してからアメリカに電話したり、ライヴのあと夜中にホテルでメールしたりして、毎晩作業をしてたんだ。モダンテクノロジーがなせるワザだよね。でも、いい時代になったよ」
ーーそうして完成した新作のハイライト曲は、バンドみんなの憧れであるTHE DUBLINERSのトニー・ドリューがゲストヴォーカルで参加した“(F)lannigan’s Ball”だと思うんだけど、実現したときはどう感じた?
「俺たちのなかにはいつか一緒にコラボレートしたいアイリッシュアーティストのリストがあって、今回のトニーやTHE POGUESのスパイダー(・ステイシー)は、そのトップに上げてる伝説のアーティストなんだ。彼らのような存在が俺たちの作品に参加してくれたことは、本当に光栄だし、この1曲のためにダブリンにいったんだけど、すばらしい経験になったよ」
ーー前作、前々作には、アメリカを代表する伝説的フォーク歌手ウッディ・ガスリーの歌詞を引用した曲があったけど、今回は?
「今回はないんだけど、彼の音楽からの影響はいろんなところに出てると思う。リリックに関しては、もう少し自分たちで書く努力をしなきゃと思ってさ(笑)」
ーーそのリリックだけど、家族、幼少時代、友情、地域社会をテーマにした曲が多いけど、これは最初から決めてたテーマなの?
「そうではないんだけど、リリシストである俺もベースのケン(・キャシー)も最近父親になったし、世界を子供の目で見たり、子供を通して自分の幼少時代を再体験する機会が増えたんだと思う。だから、自然とそういうテーマに偏っていき、あとでその多さに自分たちでも驚いたくらいなんだ」
ーー今後は、またツアー続きの日々となると思うけど、数日前に終えたヨーロッパツアーはどうだった?
「毎日すごい盛り上がりだったよ。ドイツのとあるフェスティバルでは、俺たちがあまりにもうるさすぎて、隣のステージのPLACEBOが途中で演奏を止め、その次に控えてたPEARL JAMは、俺たちのライヴが終わるまでステージに出てこなかったらしいよ」
ーーフェスで新曲もプレイしたの?
「うん、あの曲とか…えーっと、なんだっけ、あのタイトル? って、言い訳じゃないんだけどさ、歌詞やタイトルは曲がまとまってから決めることが多くて、初期段階では自分たちのなかで適当なタイトルをつけて呼んでるから、作品が出たあとも、その仮タイトルじゃないと瞬時にわからないときがある。たとえば“The State Of Massachusetts”も、最初は“Rumble Bumble”って呼んでたから、バンド内では、正式タイトルより“次はRumble Bumble Songだぞ!”とか言う方が伝わりやすかったりするんだ(笑)」
ーーじゃあ、ライヴでもそうリクエストするよ。早くジャパンツアーも決まるといいね。
「今年のPUNKSPRINGは出演時間が短かったから、俺たちも早くフルセットのライヴを日本でやりたいと思ってるんだ。絶対いくから、もう少し待ってて!」

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