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【2021.03.24更新】

OCTOBER 11, 2011 at HOLLYWOOD PALLADIUM, Hollywood, California

text by Aya Miyahara
photo by Micah Smith(FUSEMEDIA)
reconstruction by Hiro Arishima

祝5年ぶりの日本ツアー(2012年2月に)決定!EVANESCENCEの進化を興奮で充満のLA公演で目撃!

この夜のEVANESCENCEのライヴは、新作『EVANESCENCE』のリリースでバンドが完全復活することを予感させていた!この新作は、発売初週に127,000枚を売り上げ、前作『THE OPEN DOOR』(2006年)以来、実に5年ぶりとなる全米初登場1位に輝いた。あとからこの結果を知り、改めて私はEVANESCENCEの依然変わらぬ人気の高さと、彼らのカムバックを心から待ち望んでいた人たちの多さを深く思い知った。
新作のリリース日である10月11日に行われたロサンゼルス公演に選ばれたのは、70年以上の歴史を持つハリウッドの有名会場、パラディアム。到着して目に飛び込んできたのは、会場を取り囲むように長蛇の列をなすファンの姿だ。新作からのナンバーを生で聴きたくてうずうずしていたファン、もしくは早々と新作を手に入れて必死に聴き倒してきたであろう熱狂的なファンなどで大賑わいだった。なかにはエイミー・リー(vo,key)のルックスやファッションに強く影響されたと思われるゴシックファッションの女性や、EVANESCENCEの幅広いファン層を証明するかのように両親同伴のキッズから、50代と思しきロックファンの姿も見られた。
まずRIVAL SONSがブルージーでハードなロックを聴かせたあと、NINE INCH NAILSの“Closer”をBGMに登場し、女性ファンを中心とした大きな歓声で迎えられたのが、THE PRETTY RECKLESSだ。今夏サマソニでご覧になった方ならご存知だろう。テイラー・モンセン(vo)の手足は、彼女の名を世に知らしめた人気TVドラマシリーズ『ゴシップ・ガール』を知っている人にもハッと息をのむほど長く、そして手ですっぽり隠せるような小顔を強調するようなスーパーロングの金髪をルーズに三つ編みにしている。まだ18歳で未成年である彼女が、「会場でお酒を飲んでる女の子たちに捧げるわ」と披露した“My Medicine”のハスキーヴォイスや彼女の倍は年齢差がありそうな男性メンバーに、時折すり寄りながら歌う姿はまさにバッドガールだ。自身の曲はもちろん、AUDIOSLAVEの“Like A Stone”をカヴァーして早熟な姿を見せていたけれども、コートニー・ラヴのようなドラマ性が若い彼女にはまだ少ないぶん、歌やギターに集中。その姿は、彼女の一種の表現スタイルとしてクールだが、少々物足りない。しかし、MCでロサンゼルスの観客を煽る懸命さに、10代らしいヴァイブがあり、たまらなく微笑ましかった。成功を掴んでいた女優業をきっぱり捨ててまで選んだ彼女のミュージシャン道が輝かしいものであるよう願って止まない。
メインアクト、EVANESCENCEがいよいよ登場となると、観客が一気に前方へ押し寄せた。が、同時に暴れるよりも少し離れたところからゆっくり観たいと思う人たちもかなりいて、楕円形のフロアと客席は二階席のバルコニーにもかなりの人が集結してグルリと取り囲むようにしながら大勢のファンが開演を待った。テリー・バルサモ(g)のギターアンプの上に、近年ロブ・ゾンビがリメイクしたことでもお馴染みのホラー映画『ハロウィン』のマイケルのマスクが置いてあったのはファンからのプレゼントだったのだろうか?結局終演までそのマスクがテリーの顔に装着されることはなかったが、あと20日でハロウィンという時期に相応しい小道具も目を楽しませてくれた。
22時04分開演。同公演の9日前、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたロックフェスティバル、Rock In Rioのフルパフォーマンスがネットで配信されていたので、新MV“What You Want”に映るエイミーと現在の彼女のプロポーションに変化がないことは知っていたが、それにしても以前と比べほっそりとしているし(特にウェストライン)、動きも機敏だ。アグレッシヴな“What You Want”のテンションに合わせ、長い黒髪を振り乱しながら歌う彼女の姿に見とれてしまった。
今年(2011年)8月以降、アメリカでのフェス出演などを経て喉が潤っているからだろうが、約2年間ライヴから遠ざかっていたことが信じられないほどエイミーのヴォーカルは明らかに伸びやかで安定感があり、たくましく、そして美しく進化している。さらに、これまでメンバーチェンジを幾度となく経験してきた彼らだが、2007年に在籍後、SEETHERのリードギタリストを務めていたトロイ・マクロホーン(g)が復帰。2007年や2009年など何度かサポートを務めていたドラマー、ウィル・ハント(元SKRAPE)が今春STAINDのツアーサポートを経て加入という、バンドに馴染みのあるメンバーが戻った。トム・マッコード(b)や、エイミーとの共同制作者として重要な役割を担うテリーという現体制のよさも功を奏しているのではないだろうか。特にウィルの体全体で躍動的にリズムを叩き出す姿は、エイミーの華やかさやアグレッションをより引き立て、見応えが増している。余談だが、新曲“The Change”ではエイミーとウィルの2人のみにスポットライトが当てられていたほど。
そんな今のEVANESCENCEの魅力をほんの1曲、しかもオープニングでダイレクトに伝える曲として、“What You Want”はもっとも相応しく感じた。たった1曲で、バンドの進化を実感し、一気に高揚しているなかで続いて演奏されたのは、デビュー作『FALLEN』(2003年)からのおなじみのヒット曲“Going Under”。エイミーの低音から高音のもっとも際の部分を楽しめるこの曲も、今まで幾度か観たなかでも抜群の歌声と迫力だ。彼女のパッションはきっと誰にも止められないだろう。
その勢いをそのまま体現したかのような作品こそが新作であり、5年のブランクを一蹴してあまりある自信作だからこそセルフタイトルを冠したのではないかと、次々に繰り出される新曲(結局トータルで8曲披露)を聴きながら思った。
再びライヴシーンに戻ってこられた喜びを自らだけでなく、観客も共感してくれていることに対し、何度も感謝の言葉を発していたエイミー。あとで調べてみたら、この夜のセットリストはプエルトリコを含む直前の2公演と同じだったが、新作発売日の、重要都市ロサンゼルスなだけに、気合いもさらに入っていたのではないだろうか。そう思った理由のひとつが、“Made Of Stone”“My Heart Is Broken”、そして“Sick”など、すでに6曲もの新曲を披露したあとのエイミーが語ったこんな言葉にある。
「新曲を演奏するのが好きでたまらないの。ついに今日アルバムがリリースされたんだもの。私たちと一緒に祝ってくれて本当にありがとう。今夜は私たちのパーティよ!」
その直後に演奏した新曲“Oceans”の盛り上がりは、想像に難くないだろう。もちろん、おなじみのナンバーもしっかり披露してくれたが、“Bring Me To Life”で男性ヴォーカルパートが完全に取り払われてるのには少々びっくりした。しかし、男性ファンがそのぶんを埋めるかのように歌っていた。
再び全米1位を獲得し、会心の新作を引っさげて世界をツアーして来年(2012年)2月ついに日本へやってくるEVANESCENCE。きっとこれまで以上にロックアウトしていて情感豊かなステージで魅了してくれることだろう。

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