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【2021.05.31更新】

特段なにかバンドに新しい動きがあるわけじゃない。ふと思い出し、「かつてよく聴いたなあ」と懐かしくなり、久しぶりに聴いたユル~いインダストリアルロックバンド、GODHEAD。通算5枚目で、メジャーデビュー作となった『2000 YEARS OF HUMAN ERROR』(2001年)と、続く『EVOLVER』(2003年)を聴いたところ、「いいなあ~」となり、かつてGrindHouse magazineに掲載したインタヴュー記事を再公開する。(有島博志)

text by 小林紀子
translation by 栗原 泉


独自サウンドを探求し、新チャプターへ突入したGODHEAD。唯一無二の最新作が登場。

前作『2000 YEARS OF HUMAN ERROR』(2001年)から約2年ぶりとなった、GODHEADの5thアルバム『EVOLVER』。遅ればせながら、ようやくその日本盤がお目見えした。リリース前後に発生した、さまざまな難題を乗り越えてきた彼ら。本作では、進化し続けるGODHEAD独特の世界観を、たっぷり感じられること間違いなし。バンドの近況と新作について、メンバーのジェイソン・ミラー(vo,g)に話を聞いた。

ーー前作から新作をリリースするまでに約2年の月日を要すことになりましたね?
「いろいろあって遅れたんだよね。マリリン・マンソンのレーベル、Posthumanが閉鎖して新しいレーベルを探さなきゃならなくなってね。その間に新作を作って、それと並行してロサンゼルスでショウケースライヴをやったりして。僕たちがまたレーベルを探し始めたっていうのをみんなに知ってもらう必要があったから、そういうことでずいぶん時間がかかった。PosthumanはPriority Records(かつてヒップホップで名を馳せたレーベル)が資本元だったんだけど、その資本元が倒産しちゃったからさ。だからPosthumanもどうしようもないっていうか、ほかの出資元を探さなきゃいけないってことになって、僕たちは僕たちでやっていかなきゃならなくなったんだ。別にそこでPosthumanとの間に確執が生まれたとか、そういうことではなくて、あくまでもビジネスサイドの状況がそうなっちゃったっていうことなんだけど。そう、それでショウケースをやりながら新作を作ったから、そんなに時間がかかっちゃったんだよね」
ーーそれでは、あなたたちを取り巻く環境もずいぶん変わったのではないですか?そこから楽曲のインスピレーションを得たりしたとかありましたか?
「そうだね、そのときに経験したことは歌詞の部分に反映されたし、インスピレーションの元になったりする。辛いできごととかもソングライティングのインスピレーションになったりするから。一緒にツアーに出たことのあるバンドや、オズフェストに出たっていう経験もインスピレーションの基になるし、ここ2年間いった場所、会った人々から受けた影響が新作のサウンドを左右してるとも言える。それは歌詞に関しても言えるね」
ーー本国で新作をリリース後、新ドラマーとして元STATIC-Xのケン・ジェイが加入しましたが。
「僕たちと彼は以前から友だちでね。マイク(・ミラー/g)がたまたまガソリンを入れにいったらその近所に住んでた彼とバッタリ道で会って、世間話の合間に“新しいドラマーを探してるところなんだ”って言ったんだ。彼を誘うつもりは全然なかった。彼が興味を持ってくれるなんて思ってなかったから。だけど彼が興味を持ってくれて、一緒にやってみたら凄くいい感じだった。残念なことに長期的な形にはできなかったけどね。彼が病気にかかってしまって、ツアーを1本終えたところでドクターストップがかかり、彼は4ヵ月休養しなきゃいけなくなった。昨年やるはずだったヨーロッパ・ツアーもドタキャンになってしまって残念だったよ。彼のために奔走してたら新しいドラマーを見つける時間もなくなっちゃって。今現在、彼は一時的という形だけど、音楽業界から引退したような感じになってる。故郷イリノイに戻り、少しずついろんなことをしてるみたいだけどね。で、僕たちは初代ドラマーのジェイムズ(・オコーナー)に戻ってきてもらい活動してるよ」
ーー新作を作るに当たって、コンセプトなどを設定しましたか?
「なにか僕たち独自のものを作りたいと思ってたよ。そのために方向性を定めて進めていった。プロデューサーとも仕事をしたしね。自分たちのやりたいことを明確にやっていく自由もあったし。だから自分たちができる限りの、今までとは違うことをやっていこうって努力したと思う」
ーータイトルを『EVOLVER』とした理由を教えてください。
「いいタイトルだなって思って、僕たちの新しいチャプターでの進化したサウンドにピッタリだから(evolve=発展・進化などという意味)。それと同時に、ちょっと面白いタイトルじゃない? THE BEATLESの『REVOLVER』を見ながら『EVOLVER』っていいかもって、思いついたんだ」
ーー新作の制作にはどのくらいの時間がかかりましたか?
「レコーディング自体は3ヵ月で終わった。ソングライティングには1年かけたけど、スタジオに入ってからは3ヵ月で終わった」
ーー“The Giveaway”ではSTATIC-Xのウェイン・スタティックと、“The Hate In Me”などの3曲ではデヴィッド・ボウイとの仕事で知られるリーブス・ゲイブリエル(g)をゲストに迎えてますね?
「ゲストアーティストを迎え入れるっていうのは、外部の人に参加してもらうことで、彼らの貢献によってよりよいものを作れるんじゃないか、っていう考え方から始まってるんだ。ウェインはもともと友だちだし、だから彼に歌ってもらうのもいいんじゃないかなって思って。サウンド的にもいいものに仕上がったよ。リーブスはもっともすばらしいギタープレイヤーのひとりだと思う。リーブスが参加すると確実に新しい要素が持ち込まれる。だから彼に頼んだんだ。だって彼が参加した作品では、彼が持ち込んだ要素が常に引き立ってるからね。レコーディングは凄くスムーズに進んだし、楽しかった。2人とも仕事をしやすい人たちだからね」
ーー特に“Ghost Of Your Memory”は、THE CUREに通じるようなサウンドを所々に感じましたが、ゴシックパンクやニューウェーブを好んで聴いてきたんですよね?
「うん、みんなそうなんだけど、特に僕はね。THE CURE、SISTER OF MERCY、BAUHAUSに夢中だった時期がある。マイクは純然たるメタル狂なんだけど、メソッド(programming,b)はDEPECHE MODEとか大好きだし。そういったそれぞれの嗜好が混ざり合ってるんだ」
ーー“Without”は、アコースティックギターを用いたエモーショナルで美しい楽曲です。本作のなかでもっとも印象深く、重要な楽曲だと思うのですが、この曲を作った経緯を教えてください。
「あの曲は別れをテーマにした曲なんだ。僕が別れた彼女と過ごしたときのことなんだけど、別れたことで気づいたこと、見えてきたことを曲にした。毎朝目が覚めたとき、落ち込んでいたり沈んでいたりしたときに、せめて彼女がいてくれたらいいのにって思う。だけどそんなこととは関係なく毎日は進んでいくし、そこで気づくんだ。誰かに僕の気持ちを変えてほしいと願うんじゃなく、変わるのは自分だってね。そういうコンセプトの曲なんだよ」
ーー兄弟(マイクとは実の兄弟)でアコースティックライヴを行ったそうですね?
「うん、普段とは違う形で、自分たちを表現するのって楽しいよね。僕たちの違う側面を見せることもできるわけだから。観客にとっても楽しいと思うし、普段とは違うセットが観られるんだから」
ーー新作の日本盤がリリースされるまでに半年の間がありました。日本盤が出るのを心待ちにしてた、ファンにメッセージをお願いします。
「半年も待たせてしまってごめんね。だけど待ったかいがあったって思ってもらえるような作品だと思ってる。日本にもなるべく早くいきたいと思ってるからね。みんなのためにライヴをしたいから。個人的に、日本はどこよりもいってみたい国なんだ。僕は日本のアニメが大好きだから」

追記なのだけど、GODHEADの『2000 YEARS OF HUMAN ERROR』でのメジャーデビューは実に華々しかった。当時、人気絶頂期にあり、ブイブイ言わせてたマリリン・マンソン設立のレーベル、Posthumanからのリリースだった。マンソンは作品の一部をプロデュースしたのをはじめ、1曲にfeat.参加、1曲を競作した。さらにトゥイギー・ラミレス、デイジー・バーコウィッツも曲作りに参加するなど“マンソン・ファミリー”からガッツリとサポートを得たなかで完成を見、リリースされた作品だった。

ジェイソンが上記のインタヴューで語ってる通り、Posthumanが閉鎖の憂き目にあったため、バンドはレーベルをReality Entertainmentに移籍し、『EVOLVER』(2003年)を発売した。

かつて、GODHEADのライヴを2度観てる。最初はOzzfest  2001の2ndステージで。彼らのライヴがどうだったのかの記憶がほぼ皆無なのだ(汗)。2度目は、KORNのジョナサン・デイヴィスが初の半アンプラグドソロツアーに出たときのサポートアクトで。インダストリアルロックのイメージがあっただけに、その彼らがアンブラグドセットをやるというのをとても意外に思ったことを覚えてる。

だけど2007年に7曲入りのアンブラグドEP『UNPLUGGED』をリリースしてる。

2014年春に『THE SHADOW REALIGNED』発売以降、バンドに表立った活動は見られない。また動き出してほしいものだ。

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