【2021.02.15更新】
Spotify 第7回目プレイリスト公開に合わせ、ニューヨーク・ハードコアのまさに“伝説”のGORILLA BISCUITSの初来日公演時のライヴリポートを再公開する。2009年1月31日発行のGrindHouse magazine Vol.52に掲載したものだ。
GORILLA BISCUITS、SWITCH STYLE、NUMB、FC FiVE
December 2, 2008 at SHIBUYA O-EAST, TOKYO
photo by Wataru Umeda
全盛期のニューヨークハードコア・シーンで活躍し、その後のポストハードコアにも影響を与えた伝説的バンド、GORILLA BISCUITS(通称ゴリビス)が奇跡の初来日を果たした。しかも、目玉となった渋谷O-EAST公演にはSWITCH STYLEが復活参戦。80’sと90’sの時代的違いはあるものの、元ハードコアキッズが集うお祭りと化した。
まず登場したのは、現ハードコアシーンの先頭を突っ走るFC FiVEと、続いて結成以来ストロングスタイルを貫く重鎮NUMBの現役組だ。その2バンドにたいしては残念ながら集まった観客の多くが遠巻きに見守る観戦モードだったものの、そんな逆境でこそバンドの自力が問われるものだ。FC FiVEの研ぎ澄まされたキレ味と、NUMBの重々しい圧力には、同窓会気分で集まった人々の風化しかかってたハードコア魂に再び火が灯ったはず。じわじわと場内の熱気は上昇し、続くSWITCH STYLEで一気に爆発した。
インディー時代にその激エモーショナルなサウンドで熱烈な支持を集め、90年代後半の国内ハードコアシーンを盛り上げたSWITCH STYLE。メジャーデビューを境に脱退したYURI(g,vo)を含む初期メンバーでの11年ぶりとなる突然の、この復活劇に、多くの人が触発されたのだろう。それまで若干まばらだったフロアが完全に埋まる満員御礼状態に。場内が暗転してスクリーンに昔のライヴ映像が映し出される演出を経てメンバーが登場する。アナログ7インチシングルのみで発売されたデビュー音源『SWITCH STYLE』(1995年)の楽曲からパフォーマンスを開始すると、フロアは一気にピークへと達する。アーティスティックな趣も強いため、先に出た2バンドほどアグレッシヴではないが、ぐいぐい観客を引き込むプレイはさすがだ。久方ぶりのステージを噛み締めるようにプレイする姿に、モッシュやダイヴが巻き起こるも、どこかノスタルジックな空気も漂う。“A Way”でNUMBのSENTA(vo)が飛び入り参加したあと、ラストはもちろん代表曲の“For Myself”。強烈かつ感動的に盛り上がるなか、「また会おう」という言葉を残してバンドはステージをあとにした。SWITCH STYLEでの予想以上の盛り上がりに、トリのゴリビスまで観客のテンションが持続しないのでは?との不安もあったが、そんな心配は一切不要だった。名盤『START TODAY』(1989年/日本盤未発売)と同じくファンファーレの高らかな響きを合図に、1曲目の“New Direction”からモッシュ&ダイヴの巻き起こるフロアは完全にもみくちゃに。ライヴ前のインタヴューで、ウォルター・シュレイフェルズ(g)はゴリビスを「昔も今も純粋に友だち同士でプレイすることを楽しむバンド」と語ってたが、心の底から楽しむメンバーの姿に観てる我々にもその喜びが伝染する。“No Reason Why”や“High Hopes”など、デビューEP『GORILLA BISCUITS』(1988年/同)からの楽曲に対する反応も大きく、ドンドン勢いは加速する。次々とステージにファンが上がっては笑顔でダイヴを繰り返す。また、軽やかにステージ上を動き回るCiV(vo)や、強烈なプレイでバンドのボトムを支えるルーク(ds)のド派手なドラミングなど、衰えを知らないスピード感のあるパフォーマンスに、テンポよくライヴは進行していく。本来はアンコールを挟む予定だったんだろうが、いったんステージを離れようとする周りのメンバーをCiVが引き止め、そのまま最後の“Start Today”まで一気に駆け抜けた。
現代のメロディックなパンクロックやハードコアの基盤を築いたと言われるゴリビスだが、その原動力は間違いなく心の底から楽しみつくすこと。結成から約20年経った今もその点に変わりはないし、だからこそバンドも観客もみんながまるで10代のような純粋な気持ちで楽しめる理想的な空間が、そこには広がってたのだ。
以下は当日のSWITCH STYLEと、GORILLA BISCUITSのセットリストだ。
ーSWITCH STYLEー
01.PASS
02.DISTANCE
03.WE JUST TESTIFY
04.IN SEARCH OF COVER
05.LINK
06.WHY CAN WE HATE?
07.LIFE
08.LIGHT AND SHADE
09.A WAY
10.FOR MYSELF
ーGORILLA BISCUITSー
01.NEW DIRECTION
02.STAND STILL
03.BETTER THAN YOU
04.TWO SIDES
05.THINGS WE SAY
06.BIG MOUTH
07.DEGRADATION
08.NO REASON WHY
09.SITTING AROUND AT HOME(cover of BUZZCOCKS)
10.FIRST FAILURE
11.HIGH HOPES
12.FINISH WHAT YOU STARTED
13.COMPETITION
14.FORGOTTEN
15.GOOD INTENTIONS
16.GM2 1 (S.L.U.T.)
17.DO SOMETHING(cover of CIV)
18.TIME FLIES
19.BISCUIT POWER
20.HOLD YOUR GROUND
21.AS ONE(cover of WARZONE)
22.CATS AND DOGS
23.START TODAY
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