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【2020.11.02更新】

新EP『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』発売を祝し、弊誌GrindHouse magazineに初めて掲載したBRING ME THE HORIZONのオリヴァー・サイクス(vo)の電話インタヴュー記事をここに再公開する。2nd『SUICIDE SEASON』(2008年)で日本正式デビューしたタイミングで取材し、2009年1月31日発行のGrindHouse magazine Vol.52に掲載したものだ。

取材/文・有島博志
通訳・国田ジンジャー

飛ぶ鳥を落とすような勢いとは、まさに今のBRING ME THE HORIZONのこと!!

ついにメタル/デスコア界の若き有望株、BRING ME THE HORIZON(BMTH)が2枚目『SUICIDE SEASON』で正式日本デビューした。今、欧米でもっとも勢いに乗り、注目度が高い、イギリス中部シェフィールド出身の5人組だ。早くもデスコア域を超越、混沌としつつも、ここそからインテリジェントな響きも放つ、独自の重轟音は今ぜひ聴いてほしいサウンドだ。昨年末、オリヴァー・サイクス(vo)にインタヴューした。

ーー平均年齢が20.6歳とうら若く、これまでに発表したのは5曲入りEP『THIS IS WHAT THE EDGE OF YOUR SEAT WAS MADE FOR』(2004年/日本盤未発売)と1stフルアルバム『COUNT YOUR BLESSING』(2007年/同)の2作で、キャリア的にもさほど長くないですけど、早くも北米圏でヘッドラインツアーができる新人は、今イギリスにアナタたち以外にはいません。なぜ、それが可能になったと思います?
「なぜだろう?イギリス出身で成功できなかったバンドが多いのに、なぜオレたちができたのかってよく聞かれるけど、オレたちには本当にその理由がわからないんだよ」
ーー2008年のWarped Tourに出演し、2月14日にロサンゼルスから始まるTaste Of Chaos Tourにも参戦が決まってます。ものスゴいスピードで事がイイ方向に進み、BMTHはどんどん階段を駆け上がってるように見えるんですけど、正直すべてがうまくいき過ぎて怖かったり、慎重になったりすることってありません?
「いや、とてもエキサイティングだよ。メンバー全員、最高にハッピーだし、感謝もしてる。イギリス以外の国にオレたちを観たいって言う人たちがいるなんてすばらしいことだ。オレたちの音楽を信じてくれてるみたいだから最高さ」
ーー今回、初インタヴューなので、主に基本的なことを聞きます。バンドはイギリスのシェフィールド出身ですが、いつ、どういうきっかけで結成されたんです?
「よくあるバンドの結成の仕方と同じで、オレはマット(・ニコルス/ds)とは昔からの友だちでね。彼とバンドを組もうとしたり、いろんなバンドに参加したりしたけどうまくいかなかった。2人とも大学に進み一時バラバラになったんだけど、マットは大学でギターのうまい連中と知り合い、一緒にバンドを組もうって話になったらしく、オレのところにきて一緒にやってみないかって誘ってくれたんだ。で、彼らとやってみたらうまくいったんで、在シェフィールドのマット・キーン(b)を迎えた。そこからBMTHが始まったんだ」
ーーバンド名がユニークですけど、誰が命名者で、それにはどんな意味があるんです?
「命名したのはオレで、オレたちの曲のリリックの一説からとった(EP『THIS IS~』収録曲“RE:They Have No Reflection”のLet’s go chase the sunset bring me the horizon~のくだり)。バンドを象徴する言葉だと思い、選んだんだ。意味は、毎日が自分たちの最後の日のように目一杯生きよう、自分たちの人生を意味あるものにしようってことなんだ」
ーーメンバーそれぞれ違ったりもするでしょうけど、主にどの辺のアーティストから影響を受けてるんです?
「音楽に目覚めてからは、USハードコアに影響を受けた。NORMA JEANとかTHE RED CHORDとかね。だけど、曲作りをしてるときは誰の影響下にあるとか、誰のサウンドに似てるかとかは一切考えない。好きな音楽を作り続け、早くライヴがやりたいって思ってただけだから」
ーーBMTHの音楽はよくデスコアという言葉をもって紹介されますけど、実際「自分たちはデスコアをやってる」という自負、自覚ってあります? また、BMTHにとってデスコアとはどういう音楽を言うんです?
「新作ではもうデスコアとは呼ばれてないと思うけど、『COUNT YOUR~』まではよくデスコアって言われてたね。ハードコアとデスメタルを融合した音楽だから、そう呼ばれてたんだと思う。だから新作をデスコアで片づけるのは公平な評価じゃないと思うな」
ーー特に新作でそう思ったんですけど、激しくヘヴィな音楽だけじゃなく、ほかのタイプの音楽も通ってきてることがよくわかります。ヒップホップとかクラブミュージックとか。新作の曲によって、また一部のパートの音処理の仕方からそうかなと…。
「確かに、その通りさ。バンドを始めてからオレたちは進歩したし、成長もした。どのメンバーも違うスタイルやタイプの音楽も好きだ。オレ自身もよくクラブミュージックを聴くし、ドラムのマットもカーティス(・ワード/g:後に脱退)やリー(・マリア/g)もヒップホップが好きだ。こうした影響を自分たちがやる音楽に取り入れ、くだらない音楽にならないようにやってる」
ーー「進歩したし、成長もした」という言葉には説得力がありますね。EP『THIS IS~』を作ったのは10代半ばという、恐ろしく若い時期でしたものね。
「そうそう。その歳で音楽を作ったと思うとなんだか不思議な感じがするんだ。一番イイ作品ではないけど、あのEPを振り返りつつ新作を聴くと、自分たち自身の進化や、バンドの成長がハッキリと見て取れとても興味深いし、ビックリするよ(笑)」
ーー新作のジャケに登場してる女の子は可愛いですけど、両手に持つのは血まみれの内蔵です。その間には大きなギャップがありますけど、これがなにを意味し、このイメージでなにを問いかけてるんです?また、このジャケとタイトルの意味に関連性ってあります?
「新作の歌詞はこの数年間にオレが経験したことを基に書いた。けっこうシリアスなことなので、誰にも打ち明けなかったんだけど、新作ですべてをさらけ出したんだ。つまりタイトルもジャケも、全部話すっていう意味なのさ」
ーー作品的には1stより格段の成長や進化をとげ、音楽的にも幅が広がりましたね。メロディが増え、ブ厚くなり、ディープになりました。混沌としたパートもありますし。
「その通りだね。オレたちはずっとヘヴィでエクストリームなバンドでい続けるし、混沌としたパートもどんどん取り入れていきたい。なかには“新作で変わった”って驚く人たちもいて、好きになってくれないかもしれないけど、オレたちは自分たちの向かいたい方向というものに忠実でありたいんだ」
ーー前から思ってたんですけど、BMTHのリフには特殊な響きというかヴァイブがあります。そのリフがとにかく際立ち、そしてオリヴァーのヴォーカルとリズム隊と一緒になり束になって攻めに攻めるというイメージが強いです。これはBMTHの最強の武器のひとつだと自信を持ってるのでは?
「新作で自分たちならではのサウンドを見つけ出したと思うんだ。ほかのバンドとは違う音だよ。いろんなことを試してみて、一番うまくいったものを取り入れたんだ。新しいヴォーカルの音域、エレクトロパート、新しいトーンやリフにトライしたからこそ、ほかのバンドとの違いが明確に出せたんだと思うな」
ーー新作でもっともリスナーに届け、一緒に共有したい歌詞的なこと、音楽的なこととは?
「歌詞は聴く人たちが自分なりの結論が出せるくらいハッキリしてる。オレがなにを話してるかわからなくても、関わりは持てると思うんだ。人は生きてると同じような問題、もちろんまったく同じじゃないだろうけど、同じような問題を必ず経験するものさ。曲はこうした問題を背負い、人に話すのが恥ずかしかったり、怖かったりする内容でね。そういう歌詞を一緒に共有できればって思うよ」

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