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【2020.11.18更新】

グランジ/オルタナティヴロックムーヴメントをシーンの底辺でガッツリと支え、同ムーヴメントが沈静化した後もマイペースで地道に活動を続けるMUDHONEY。2018年には10th『DIGITAL GARBAGE』を発売するなど、その活動歴は32年を数える。その間、バンドは幾度となく来日してる。2009年3月31日発行のGrindHouse magazine Vol.53に掲載したライヴリポをここに再公開する!

Written by Hiro Arishima
Photo by Susie
Jan 14, 2009 at SHIBUYA CLUB QUATTRO, Tokyo

かのグランジ/オルタナティヴロックがメインストリーム域で大炸裂し、ロック界だけに止まらず、一般社会にも影響を及ぼすなどの、まさに社会現象にまでなってからもう17、18年が経つ。その頃産声を上げた人たちは今、ハイスクールライフを楽しむ日々を送る年齢だ。当時もっともモダンなものとしてとらえられ、語られたその音楽も、その月日の流れを思うとオールドスクールな音楽というレベルに近づいてる、と言えなくもない。エモやスクリーモといった、わりかしあたらしめの音楽を入り口に洋楽ロックを聴き始めたヤンジェネ層の多くは、この音楽など知るよしもなかろう。
しかし、あえて言う。MUDHONEYはグランジ/オルタナティヴロックの始祖バンドだ。NIRVANA(R.I.P.)やMELVINSと並んで、PEARL JAMやSOUNDGARDEN(R.I.P.)、THE SMASHING PUMPKINS、STONE TEMPLE PILOTSなどよりずっとずっとグランジーで、そこは今なおさほど変わらない。そんな彼らが実に10年ぶりとなる3度目の来日をした。
場内に入った瞬間、思わず後ずさりしそうになった。思ってたより断然混み合ってたからだ。間違いなく、前回の来日のときよりお客さんの数は多い。自分も含めて、MUDHONEYとともに歳を重ねた年齢層の高いお客さんが多かった一方で、グランジや彼らを後追いで知り、好きになったとおぼしき若い層も決して少なくなかった。デビューEPで“名盤”の誉れ高い『SUPERFUZZ BIGMUFF』(1988年)が昨年発売20周年を迎え、それを記念しボートラを大量に追加収録し、15曲もの未発表ライヴ音源が楽しめるボーナスCDもつけたデラックスエディションが発売された。それがきっかけで、MUDHONEY再考熱が高まってるのだろうか。理由はともあれ、場内にはナイスな光景が広がり、イイ感じの空気に満ちてた。
2000年発売のWセルフコンピ作『MARCH TO FUZZ』(日本盤未発売)収録曲ながら、のっけからFANGのカヴァ-“The Money Will Roll Right In”をやるなど、MUDHONEYのライヴパフォーマンスは予想外の展開で始まった(笑)。久しぶりに拝んだ“生”MUDHONEYーー。マーク・アーム(vo, g)、スティーヴ・ターナー(g)、ダン・ピータース(ds)の表情や躯には正直年輪を感じた。自ら“MUDHONEY GANG”と呼び、パンクロック的やんちゃをヤリ倒してた頃がホントに懐かしい。2001年初頭を最後に、音楽から足を洗ったマット・ルーキン(b)の姿が見当たらないのはやはり寂しい(現在は地元シアトルで大工をやってるとか)。現在ベースはオーストラリア人のガイ・マッティソンだ。
だけど、結成20年以上という長い歳月なんてどこ吹く風、知ったこっちゃない、根本的には彼らは不変であり、まったくもってブレてないことが、観ててよくわかった。気だるそうで、どこか世のなかを斜めに見てるようなヴァイブ&オーラ、もっこもこゴッソゴソ言わすファズ音、まるでシアトルの曇り空を音に転換させたようなうっすらとしたダーク感、曲を矢継ぎ早に繰り出す性急さに、そこから発せられる尖ったテンションなどは、まさにまんま彼らのものであり、それらに乗って“Touch Me I’m Sick”“Suck You Dry”“You Got It”“Good Enough”“This Gift”といった初期代表曲や、それ以降の最近曲が聴け、実にゴキゲンな夜となった。そしてエラく久しぶりに彼らのライヴを観て、グランジという音楽がパンクロックのアティテュードをもって(あくまでもメタルではなく)ハードロックを演るスタイルなんだと、改めて強く思わされた。

以下は当日のセットリストだ。

01. THE MONEY WILL ROLL RIGHT IN(cover of FANG)
02. I’M NOW
03. THE LUCKY ONES
04. NEXT TIME
05. INSIDE OUT OVER YOU
06. YOU GOT IT
07. SUCK YOU DRY
08. INSIDE JOB
09. BLINDING SUN
10. SWEET YOUNG THING AIN’T SWEET NO MORE
11. GOOD ENOUGH
12. NO ONE HAS
13. TOUCH ME I’M SICK
14. F.D.K.(FEARLESS DOCTOR KILLERS)
15. HARD ON FOR WAR
16. THIS GIFT
17. WHEN TOMORROW HITS
18. IN ‘N’ OUT OF GRACE
19. HATE THE POLICE(cover of THE DICKS)
〈ENCORE〉
01. THE OPEN MIND
02. STREET WAVES(cover of PERE UBU)
03. TALES OF TERROR
04. FIX ME(cover of BLACK FLAG)

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