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【2021.03.01更新】

ニューヨークではなく、US東海岸コネチカット州ブリッジポート出身ながら、第2世代バンドで、ハードコアとメタルをまたぐ形で頂点に立ったHATEBREED。そんな彼らの、4度目となった来日公演のライヴリポートを再公開する。2007年3月31日発行のGrindHouse magazine Vol.41に掲載したものだ。

HATEBREED

March 21, 2007 at SHINSAIBASHI CLUB QUATTRO, Osaka

text by Saori Kamei
photo by Shigeo Kikuchi
reconstruction by Hiro Arishima

LOUD PARK 06出演からわずか5ヵ月でHATEBREEDの単独ツアーが実現。彼らのライヴで渦巻くサークルピットのデカさは有名だが、ここ日本でもその“円”は来日するたびに確実に巨大化している。今回の会場はクアトロ。ハコの規模からして、どんな凄まじいことになるのやらと、心して初日の大阪公演に挑んだ。まずは関西出身のGNz-WORDが、男気炸裂の強烈なメタルコアを叩きつけた。関西弁のMCも熱く、地元のファンに熱狂的に迎えられていた。そして、ほどよく蒸気した場内に映画『ロッキー』(1976年)のテーマが流れ、大歓声が沸き起こる。まるで、格闘技の試合でも始まるかのような興奮と緊張が漂うなか、HATEBREEDが現れた。メンバーが持ち場につくや否や新作『SUPREMACY』の一発目“Defeatist”で勢いよくスタート。その後“Proven”“Destroy Everything”と徹底的にファストな楽曲を連発。早くもモッシュピットに女子クラウドサーファーも出現し、手がつけられない状態に。ジェイミー・ジャスタ(vo)もご満悦の様子だ。デビュー作から新作収録曲までの、新旧織り混ぜたセットで容赦ない猛攻が続く。ブルータルな音塊がまるでブルドーザーのように突進してくる。会場の構造上、前方が過密し過ぎてスペースがなく、巨大人間扇風機が見られなかったのはなんとも残念だったが、フロアは制御不能のウィンドミルが大暴れする危険地帯と化していた。だが、HATEBREEDのファンは、やみくもに暴れまくるのではない。正しく暴れるなんて表現はおかしいが、歌うところは歌う、ジャンプするところはジャンプ。と、コール&レスポンスは完璧なのだ。まあ、これだけ魅力的なモッシュ/コーラスパート、ブレイクダウンをかまされたら、流儀に従うしかないだろう。まったく、シンプルなリフとリズムのみでここまで刺激的でインパクトある楽曲を量産できるなんて、感心しきりである。
ジェイミー以外のメンバーも実に楽しそうで、激しくステージ上を動き回り、観客を煽り立てる。その生き生きした姿から、現在のバンドの充実ぷりは一目瞭然だった。煽りを受け、サイドのスピーカー脇からダッシュしてモッシュの輪に飛び込む者、神輿のように人を担いでモッシュの輪を横切る者も現れる始末。しかし、場内に満ちていたのは、暴力的なエネルギーではなく、スポーツみたいな健康的なヴァイブだった。それは、彼らの歌がヘイトソングではなく「苦難を乗り越えよう、前向きに生きよう」というポジティヴなものだからだ。そんなメッセージを届けようと、曲の前に簡単な解説を加え、呼びかけるように熱唱するジェイミーの真摯なパフォーマンスが胸を打つ。バンドの初代ギタリストで今は亡き朋友、ルー・“ボウルダー”・リチャーズ、元PANTERA~DAMAGEPLANのダイムバック・ダレルへの追悼の意を表したり、当日誕生日を迎えたメンバー、ショーン・マーティン(g)へ祝いの言葉を贈ったり、誠実さが窺えるMCもすばらしかった。
テンションをキープしたまま“To The Threshold”からSLAYERの“Raining Blood”のイントロを挟み、“Straight To Your Face”という流れで盛り上がり、最後はお決まりの“I Will Be Heard”で締め。セットこそ違えど、大胆な変化はなかった。彼らはいい意味で変わらない。にもかかわらず、今回も期待以上に満たされ、猛烈に感動させられたのだから恐れ入る。ハードコアシーンを牽引する存在となった彼らの揺るぎない自信に満ちた、文字通りSUPREMACYなショウであった。「兄貴、これからもついていきますぜ!」。私を含め多くの人がそう誓ったことだろう。

以下は当日のセットリスト。

01.DEFEATIST
02.PROVEN
03.DESTROY EVERYTHING
04.BEHOLDER OF JUSTICE
05.DOOMSAYER
06.GIVE WINGS TO MY TRIUMPH
07.BEFORE DISHONOR
08.MIND OVER ALL
09.SMASH YOUR ENEMIES
10.LAST BREATH
11.PERSEVERANCE
12.TEAR IT DOWN
13.AS DIEHARD AS THEY COME
14.EMPTY PROMISES
15.HOLLOW GROUND
16.SPITTING VENOM
17.UNDER THE KNIFE
18.THIS IS NOW
19.LIVE FOR THIS
20.TO THE THRESHOLD~RAINING BLOOD(INTRO ONLY/cover of SLAYER)~STRAIGHT TO YOUR FACE
21.I WILL BE HEARD

ちなみに、HATEBREEDにはセットリストなるものが存在しない。よって、終演後にジェイミーから聞き取るしかないのだ。

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