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【2021.02.22更新】

JULIEN-Kといっても日本で知る人は非常に限られるだろう。ライアン・シャックと、アミア・デラクの主導・先導によるエレクトロユニットだ。2人ともエレクトロヘヴィロックバンド、ORGYの元メンバーで、ライアンはそれ以前にKORNの超有名曲“Blind”の競作者のひとり。アミアは80年代にLAメタルバンド、ROUGH CUTTの一員だった。JULIEN-Kが今日までに残してきたデビュー作『DEATH TO ANALOG』(2009年)を含む計5作はすべて日本盤未発売。そのJULIEN-Kのライヴリポートを再公開する。2012年3月31日発行のGrindHouse magazine Vol.71に掲載したものだ。

JULIEN-K
January 21, 2012 at ROXY THEATER, Hollywood, Los Angeles

text & photo by Aya Miyahara
reconstruction by Hiro Arishima

1990年代後半から2000年代前半にかけての頃に一世を風靡したエレクトロな要素を濃厚に注入したフューチャリスティックなヘヴィロックバンド、ORGY。その核となるメンバー、ライアン・シャック(vo,g)とアミア・デラク(g,syn)が始めたのが、エレクトロミュージックのJULIEN-Kだ。
約3年ぶりの2nd『WE’RE HERE WITH YOU』リリースの2日前、ハリウッドでリリースパーティが催された。JULIEN-Kと言えば、LINKIN PARKのチェスター・ベニントン(vo)の別バンド、DEAD BY SUNRISE(DBS)のメンバーでもある(2009年に1st『OUT OF ASHES』発売)。この夜、チェスターがライヴに飛び入り参加するのではと期待を抱きつつ、会場へ向かった。
オープニングバンドのBATTLE TAPESとI WILL NEVER BE THE SAMEを経て、あちこちを見渡すと、ファッショナブルな出で立ちの女性ファンから、ORGYのファンとおぼしき人々も多く詰めかけ、JULIEN-K登場前からすでに場内には熱気が充満していた。そんな観客から自然発生したJULIEN-Kコールに応えるように幕が上がったのが、夜10時55分。ギターのフィードバック音とドラムのキック音が響き、スーツにサングラス、短く刈り上げた黒髪のすべてがスタイリッシュなライアンが駆け込むようにして登場。新作のタイトルトラック“We’re Here With You”からエネルギーを爆発させた。
ボトムが太くて肉感的なエライアス・アンドレアのドラミング。子育てのためにバンドを一時離脱する前の、最後の出演ということもあり、いつも以上に力がこもってたのかもしれない。それを差し引いたとしても、クールな雰囲気のライアンらのフロント陣と、吠え叫ぶような表情とともに叩き出すエライアスのドラムは好対照だ。曲を重ねるごとに同化して、ワイルドなライヴバンドへと化学反応を起こしていく。また、客席からシンガロングが起きた人気曲“Kick The Bass”でのコーラスもいい。彼の一日も早いバンド復帰を望まずにはいられない。
そして「メンバーではないけど、ベストフレンドのチェスター・ベニントンを紹介するよ」とのライアンの紹介を受け、なんとサングラス姿のチェスターが登場した!チェスターはアコースティックギターを抱え、椅子に腰かけながら繊細で滑らかなフロウを持つ“Fall With Grace”“Palm Spring Reset”なるカヴァーと新曲を2曲披露。チェスターの、ゆったりとリラックスした姿からもメンバーとの仲のよさがうかがえたし、このJULIEN-Kへの参加、あるいはDBSの活動継続もしてもらいたいものだ。
後半、高音が出しづらそうな表情を見せていたライアンに気づいてはいたが、本編が終わってアンコールに入ろうとした際、まずエライアスが登場。てっきり一時離脱前の挨拶をするのかと思いきや、ライアンの声が出なくなり、アンコールが1曲しかできないというお詫びのためだった。“Cruel Daze Of Summer”を終え、ステージを去ったほかのメンバーを見送ったエライアスが深く一礼する姿が、彼らしく爽やかだった。1時間10分に満たない短めなライヴではあったが、新作『WE’RE HERE WITH YOU』は、iTunesエレクトリックアルバム・チャート最高2位を記録。この勢いのあるアクションは、JULIEN-Kの明るい未来を予感させるには十分だと思う。

以下は当日のセットリストだ。

01.WE’RE HERE WITH YOU
02.FUTURA
03.SURROUNDED BY COWARDS
04.FALL WITH GRACE(cover of VANDAL)
05.I’LL TRY NOT TO DESTROY YOU(feat. CHESTER BENNINGTON from LINKIN PARK)
06.PALM SPRING RESET(feat. CHESTER BENNINGTON from LINKIN PARK)
07.KICK THE BASS
08.CLOSE  CONTINUANCE
09.BREAKFAST IN BERLIN
10.SOMEDAY SOON
11.MAESTRO
12.CRUEL DAZE OF SUMMER

なお、チェスターが飛び入り参加した2曲の模様がYouTubeにあがってる。

I’LL TRY NOT TO DESTROY YOU(feat. CHESTER BENNINGTON from LINKIN PARK)
PALM SPRING RESET(feat. CHESTER BENNINGTON from LINKIN PARK)

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