MOTIONLESS IN WHITE ライヴリポート <ARCHIVE>

【2020.08.10】

Text by Hiro Arishima
Photo by Micah Smith

もう11年以上前のことになる。東京池袋のサンシャイン通りに外資系大型CDショップチェーン店があった。GrindHouse magazineを取り扱っていただいてたこともあり、たまに立ち寄ってた。店内か広く、ゆっくりとCDを見れることもあり好きだった。ある日、ラウドロックセクションの試聴機コーナーでいくつか初めて見る、気になるCDを手にしては試聴機に入ってればしばし聴いてた。そのとき出会ったのが、MOTIONLESS IN WHITE。初めて見たバンド名だった。

作品は『WHEN LOVE MET DESTRUCTION』。ものスゴくヘヴィでダーク、時折差し込んでくるエレクトロ音に、なんとなくゴスなテイストと、すべてが自分の好みで、特に1曲目の“To Keep From Getting Burned”に持ってかれた。言うまでもなく、そのままCDを持ってレジへgo!(笑)。実はこのショップでは、時期こそ違ったけど、ポストハードコアバンド、I AM GHOSTとも似たような出会いをした。よって、自分のなかでは“当たりに会う確率の高いお店”とのイメージができ上がった(笑)。
でだ、性分というか、仕事柄というか…「さあ、MOTIONLESS IN WHITEをどうGrindHouseで紹介しよう」となった。しかし、日本盤は当時未発売で、US盤のリリース元はTragic Hero Recordsで(後にFearless Recordsよりリイシュー)コンタクトもなかった。よって紹介はGrindHouse magazineにCDレヴュー掲載、FMラジオ番組GrindHouse fmで楽曲をコンスタントにかける、というのレベルでとどまった。それから少ししてFearless経由でJPレコード会社からの発売が決まり、『CREATURES』のタイミングで本格的なサポートをスタートしたというわけだ。

ロサンゼルス出張を予定してて、偶然そのときバンドも近くをツアーしてたので、現地での写真撮影、ライヴ初観戦などをすることにした。
場所はロサンゼルス郊外のアナハイムにあるクラブ、Chain Reaction。もちろん、このときがバンドと初対面。第一印象はみな若い、とにかく若いだった(笑)。
おそらくメンバー全員20代前半くらいだったろう。まずは写真撮影に。グループショットを撮り、それからメンバー各々の個人ショットへと移った。この時点で、バンドの中心人物がクリス・“モーションレス”・セルーリ(vo)であることがなんとなくその場の雰囲気からわかった。

撮影終了後、会場の開場時刻までには時間があった。おそらく会場の楽屋が狭く、かつその夜出演バンド数も多かったことからメンバーはみな、会場近くのコーヒーショップのトイレで代わる代わる着替えをし、機材車のなかでメイクをしてた。こうした光景を目の当たりにしたとき、注目度が高いとは言え、彼らはまだ“駆け出し”“下積み”にあるんだ、と印象づけられた。
で、場内入口付近に設置されてたマーチテーブル(=マーチャン売場)を覗いてみた。すると、その場にいたマーチャン担当の男性スタッフが「さっきバンドを取材してくれてた人だよね?Tシャツ1枚持っていってよ」と。「ぇ?いや、取材は仕事だから」と一度は断った。マーチャンはバンドにとって大事な収入源だ、という思いも強い。彼はとてもフレンドリーで、しばし立ち話に。彼は「バンドと同郷(ペンシルバニア州スクラントン)で付き合いも長い。だから絶対にビッグになってほしいんだ」と。で、自分がなぜ今、冒頭に記した流れでアナハイムにいるのかを説明すると、「やっぱりTシャツ持っていってよ。日本でも着て、バンドの宣伝してよ(笑)」と言われたので、お言葉に甘えていただいたのが、下記のだ。一番目立つのを選んだつもりだ(笑)。

でだ、その夜のライヴ初観戦となったわけだ。そのリポートは2010年11月30日発行のGrindHouse magazine Vol.63に掲載してる。改めて読んでいただければ、と思う。

November 4, 2010
@ Chain Reaction, Anaheim, California

初のフルアルバム『CREATURES』(2010年)を発売、出足好調なMOTIONLESS IN WHITE(MIW)が最新ツアーの後半戦に出た。同朋かつ先輩格のA SKYLIT DRIVE(ASD)がトリに座ったツアーで、メタルコアバンド、FOR ALL THOSE SLEEPINGも一緒だ。以前からMIWに着眼し、どうしてもライヴを体感したかったので、思いきってUSカリフォルニア州アナハイム(ロサンゼルスから車で片道1時間弱)まで足を伸ばし、“キッズの聖地”ことクラブ、Chain Reactionで観てきた。SHIBUYA CLUB QUATTROを変形させたような造りの会場は、キッズに限りない自由を提供し、そして優しいクラブとして有名だ。年齢制限アリの興業は打たず(それゆえ場内でのアルコール類の販売はなく、ソフトドリンク、水のほか、普通にキャンディなどが売られてる:笑)、セキュリティなどからの縛りも緩いことから、自然と若いバンドの出演が中心となり、それに合わせて必然的にローティーン~ハイティーン世代のファンが多く集うMIWには打ってつけの環境だ。
CASINO MADRIDなるローカルバンドに始まり、SCARLETT O’HARA、WOE, IS ME、FATSが続いた夜8時45分、客電が落ち場内が暗転した瞬間、ヤングな歓声が一斉に上がり、場内いっぱいに広がった。かなりの歓待ぶりだ。そしてSEが流れるなか、メンバー6人が登場。『CREATURES』のド頭を飾る“Immaculate Misconception”でパフォーマンスを駆った。押っせ押せのたたみかけチューンにフロアは大盛り上がりで、早くもカオスが生み出されてた。
熱い!そして、とにかく暑い!曲が進むに従って、MIWと観客の押し合い、引き合い、せめぎ合いがエスカレートしていく。MIWが『THE WHORROR』(2007年/日本盤未発売)と、『WHEN LOVE MET DESTRUCTION』(2009年/日本ではTHE WORD ALIVEとの変則的スリット『THE WORD ALIVE/MOTIONLESS IN WHITE』として発売)という2枚のミニアルバムで独自のファンベースを築き、『CREATURES』発売でそれをさらに広げていることがよくわかった。ライヴバンドとしてのMIWはまだ青く、未完成で、正直突っ込みどころが満載だ。その活動歴の短さからいって致し方ないのだけど、が、しかしMIWが未完成ながらも自己ファンのサポートを全身に浴びつつ今後どんどん上に上がっていくであろう、可能性や将来性を秘めてることは大いに体感できた。これは個人的に、とても大きな収穫だ。『CREATURES』からの1stリードトラックとなった“Abigail”で約40分のセットは終演した。
15分のセット転換後、いよいよASDの出番だ。メタルコア界の顔役バンドのひとつで、かつ女子ファン率が高いこともあり、MIWのときとは場内の雰囲気がガラリと変わり、華やいだ空気がパァッと広がった。そのさなかにパフォーマンスはスタートし、“Knights Of The Round”“Heaven”“The Children Of Adelphia”といったお馴染みの曲が次から次へと繰り出され、JOURNEYのカヴァー“Separate Ways”も挟みつつ、どんどんテンションを高めていった。観客とASDが始終一体化してるところにこのバンドの強みがあり、それこそがメタルコア界の顔役バンドのひとつと言われ、目されるなによりの所以、証拠なんだと思えた。
現在、ASDは通算3枚目の最新フルアルバムを制作中で、2011年2月には発売されるそうだ。ASDもMIWも時期こそ異なるけど、それぞれ来日の話もあるという。楽しみだ。

以下、当夜のセットリストだ。

01. Intro
02. Immaculate Misconception
03. Creatures
04. To Keep From Getting Burned
05. Ghost In The Mirror
06. Cobwebs
07. Billy In 4-C Never Saw 1 Coming
08. Abigail

それから2年近く経った2012年9月にバンドは初来日し、東名阪を巡演した。運悪く自分は海外出張のため日本を不在にしてたため観れなかったけど、どの公演も客の入りは相当寂しかったと聞いた。時期的に音楽市場が急速に縮小し始めた頃で、その環境のなかでの洋楽のニューアクトの立ち上げが非常に難しいと痛感させられたのだった…。

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