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【2020.08.24更新】

2012年5月31日発行のGrindHouse magazine Vol.72に、約7年ぶりとなった復活ライヴのリポートを掲載した。ここに再公開する。

文・宮原亜矢
再構成・有島博志
写真・チェルシー・ローレン
March 21, 2012 at KEY CLUB, Hollywood, Los Angeles

KORNのジョナサン・デイヴィス(vo, bagpipe)とSEX ARTで活動し、KORNの名曲“ブラインド”を共作したライアン・シャック(g)や、リンキン・パークやコール・チェンバーの作品制作にかかわったジェイ・ゴードン(vo)らによって1997年に結成されたエレクトロロックバンド、オージー。1998年発売のデビュー作『キャンディアス』収録のニューオーダーのカヴァー“ブルー・マンデイ”や、趣向を凝らしたMVで当時鮮烈な印象を与えた2枚目『ヴェイパー・トランスミッション』(2000年)収録“フィクション(ドリームズ・イン・デジタル)”などのヒット・シングルの数々。そして、KORN主宰のパッケージツアーFamily Values Tour 第1回参戦などで存在感を放ったものの、2004年発売の3枚目『PUNK STATIK PARANOIA』(日本盤未発売)以降、活動休止に。その後JULIEN-Kや、リンキンのチェスター・ベニントン(vo)とデッド・バイ・サンライズを立ち上げたライアンとアミア・デラク(g/元ラフ・カット)はもうオージーのメンバーではないことを表明していたので、オージーの活動再開に気を揉んでいたファンも少なくなかっただろう。しかし、約7年の沈黙を破ってついにステージに戻ってきた。
ハリウッドのKey Clubには、この夜を待ち焦がれていたファンが大終結。ただ、今回の活動再開で、ジェイを除くほかのメンバー全員が刷新されていた。元デッジーのカールトン・ボスト(g)とアッシュバーン・ミラー(g)、元SNOTのジェイミー・ミラー(ds)、そしてニック・スペック(b)という編成で、再生というよりも新生と表現したい。来日公演が実現していないので、過去との比較ができないのだが、近寄りがたい印象をもっていた彼らが、非常にフレンドリーだったことにまず驚かされた。今公演にはジェイの家族やバンド関係者も多く駆けつけていたので、たぶんほかの会場とは違う雰囲気だったに違いない。MCに限らず、曲中でも可能な限り友人や知り合いに声をかけ、手を振り、ステージ脇で見ていたヴァンパイアーズ・エヴリウェア(vo)をステージに上げて観客に紹介するなど、人付き合いのよさがあらわに。また、息子を呼び寄せてブレイクダンスを披露させる父親としての顔など、こんなにも温かな人柄だったとは。メンバーに対してもカールトンやアッシュバーンに絡みついてみたり、いたずらに蹴ったりしながらコミュニケーションをとることも忘れない。
そんな彼がもっとも気を配ったのは、もちろんファン。“ブルーマンデイ”では最後にステージから下りてフロアを練り歩いて観客をカオスに導くなど、90年代にオージーの緻密なバンドサウンドとポップミュージックに魅了されてからずっと虜のファンにとってはまさに垂涎の瞬も。45歳とは思えないジェイの鍛え上げられた容姿と衰え知らずの歌声は、以前と変わらず魔法のようにファンを刺激したが、ファンにまみれてもみくちゃにされながら歌っている彼もとてもうれしそう。今回の復活を誰よりも望んでいたのは彼だということを明示しているかのようだった。
実は、新作レコーディングのため、当公演の数日前に5公演が突如キャンセルになっていたので、実験的に新曲を披露するかもと思ったが、『キャンディアス』と『ヴェイパー・トランスミッション』からの曲が中心だった(『PUNK STATIK PARANOIA』からは“Vague”のみ)。ジェイ以外のメンバーは彼に遠慮気味な印象を受けたことを踏まえ、新生オージーが真価を見せるのは恐らくこれから。エレクトロロックシーン全盛の今動き出した彼らが、先駆者的存在ならではの貫禄と不衰のオージーマジックで名盤を届けてくれることを期待したい。(以下、当夜のセットリスト)

01.Suckerface
02.Dissention
03.107
04.Vague
05.Chasing Sirens
06.Eva
07.Gender
08.Petisha
09.Fiction(Dreams In Digital)
10.Opticon
11.Revival
12.Stitches
13.Blue Monday ※cover of NEW ORDER

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