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【2021.02.24更新】

ホントはSpotifyでのハードコアスペシャルのプレイリストにSUBZEROも選曲したかったのだけど、音源のすべてが未公開なので、今回は断念せざるを得なかった。SUBZEROは1989年にニューヨークで結成された、いわゆるハードコア第2世代バンドだ。2005年7月31日発行のGrindHouse magazine Vol.31に掲載したルー(vo)への取材記事を再公開する。

取材・文/柏サオリ
通訳/栗原泉

“続けていくこと”の決断はベストだったと思う。だけど、まるっきりギャンブルなんだよ

“生粋の筋金入り”という以外の言葉があるものか。不器用すぎるほどのハードコア人生を歩むルー(vo)率いるSUBZEROがついに再始動!自ら何度か死の淵に立ったがゆえに得られた命の重さが、自らの存在価値が、このバンドに込められてるといっても過言ではない。もっと誌面でのスペースがほしいと感じるインタヴュー、本誌初お目見えだ!

ーー2003年発売の7曲入りEP『NECROPOLIS CITY OF THE DAMNED』(日本盤未発売)以降はどうしてたんですか?
「欧米でツアーをしたんだけど、あのEPってそもそもデモ音源を集めたものだったんだ。僕がガンになったりして活動が数年止まってなにも出してなかったから、とりあえず出そうって感じで。今回はちゃんとしたアルバムを出したいと思って曲作りにずいぶん時間を費やした。その間にいくつかライヴを挟んだりしてさ。とにかく2枚目の制作に集中したんだ」
ーー今回のアルバム『THE SUFFERING OF MAN』でまたメンバーチェンジしてますね。
「EPではラリー(b)がプレイしてたんだけど、彼はMURPHY’S LAWに参加して時間がなくなったんで、その代わりにエディが入ってくれた。それとドラムは、以前MADBALLでプレイしてたモンスターがプレイしてくれてる。もちろん、リッチーは今もいるよ。彼は親友だからね。今のラインナップは最高なんだ。8月の日本にもこのラインナップでいきたいと思ってる」
ーーギターをもう1本増やしたのはなぜ?
「単純にその方がヘヴィだから。ギターが2人いる方が、より立体的なサウンドになるし、エクスぺリメンタルにもなれる。リズムギターがいないと、リッチーもそこまで自由に音を出せないしね。ライヴでのサウンドが格段によくなるんだよ」
ーーわりとメタリックだったEPと比較すると、今回のアルバムは、個人的にはかなりサウンドのスタイルが筋肉質になったというか、分厚くて重く、中低音のリフが主体になったように感じるんですけど。
「うーん(笑)。筋肉質かぁ。僕が考える筋肉質と、君の言う筋肉質が同じなのかどうか解らないけど、ヘヴィでダークでドゥーミーになったのは確かだよ。だけど、そのなかにポジティヴなメッセージが織り込まれてるんだ。それが僕の視点っていうかさ、実際政治的にはいろんな画策があって社会問題もいろいろで、苦しんでる人が世のなかにはたくさんいる。だから少しでもそういう人たちが、その現実から逃れて救われたらって思うんだ」
ーー紆余曲折ありながらも、今回の新作のリリースまできたわけですが、あなた自身がSUBZEROであり続けるのは?
「メンバーチェンジがあり、バンド名を変えることも考えた。僕の音楽キャリアにおいて、これを新しいスタートとするか、継続していくかって、難しい決断だった。だけどなんていうか…自分が2回も死にかけたこともあって、人生を実りあるものにしたいっていう欲求があってさ。そのときにまた、このバンドで作品を作りたいって強く思ったんだ。実際、最高傑作を作れたと自負してるし、周囲の評価も最高だ。そう、僕たちは“続けていくこと”を選んだんだ。そして、それは僕にとってベストな選択だったと思うよ」
ーーでは、メタリックなサウンドが主流になってる、現在のハードコアシーンをどう思いますか?
「最近はメタルコアって呼ばれるバンドが多いけど、あれはハードコアとメタルを混ぜて新しいことをやってるようでいて、僕にはどこかで聴いたことのあるような焼き直しにしか聴こえない。そこにはなんのソウルもフィーリングも感じないな。キッズも音の起源がどこなのかってことに対する気持ちなんてなくて、単なるファッションになっちゃってる感じがする。今のニューヨークはちょっとユルいね。いいと思えるバンドがなかなかいない。だけど現在のシーンはね、またオールドスクールの波が戻りつつあるんだよ」
ーーそういうなかでSUBZEROはどのようなポジションにいると思いますか?
「オールドスクールなファンもいるし、新しい世代も増えてきてる。僕のメッセージも併せて、ハードコアやメタルがどんなものかをキッズに教えてあげたいんだ。トップでもないし底辺でもない、中間で安定してる、いい状況だと思う。バンドの連帯感もファンベースも固いしね。それだけあれば充分。一番になりたいと思ってるわけじゃないからさ(笑)。このまま続けていければいいなと思うけど、とりあえずアルバムをリリースして状況を見るよ。ギャンブルだよね。まずはサイコロを転がしてみてどうなるかって感じ。大切なのは、いつも自分たちが居心地よくベストをつくせる状況かな。それが最高だよね」
ーーで、最後に、体の調子はどうですか?
「今は半年に一度検診を受けてるんだ。今は健康そのものだよ。最悪だった抗がん剤治療は終わったしね。トレーニングもボクシングを再開して、スゴくいい調子なんだ。気にしてくれてありがとう」

残念なことに、SUBZEROが今日までに残してきた作品は現状すべて絶版だ。Spotifyでも未公開だ。だけどYouTube上にはある。文中に出てくる作品は下記の通りだ。

NECROPOLIS CITY OF THE DAMNED
THE SUFFERING OF MAN

また、『THE SUFFERING OF MAN』から1曲“Higher Power”でMVも製作されてる。

Higher Power

ぜひ、観て、聴いてほしい。

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