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【2021.05.24更新】

text by Tsunetoshi Kodama
translation by Yuriko Banno

新たなスタートの雰囲気を感じさせる快作を発表。でも、表題曲の“Steady As She Goes”ってまさか!?

Epitaph RecordsからVictory Recordsに移籍し、セルフプロデュースによるニューアルバム『STEADY AS SHE GOES』(2002年)をリリースしたVOODOO GLOW SKULLS。アメリカをツアーのため移動中のブロディ・ジョンソン(trombone/現在は脱退)をつかまえ、新作の話を中心に聞いたが、言葉の節々からはバンドの好調ぶりがうかがえた。

ーーまずはEpitaphからVictoryに移籍した理由から。Victoryが数少ない真の意味での“インディ”だからという理由も伝わってきてますが、もっと具体的に移籍に至った経緯を教えてください。
「端的に言えば、Epitaphとの契約が終わりそうで、オレたちとしては変化を求めてたってことさ。Epitaphでできることは一通りすべてやってしまったし、レーベルも十分に力を入れてくれてるとは思えない部分があったからね。それに比べ、Victoryのみんなはかなり盛り上がってくれてるし、ここまでのところがんばってよくしてくれてるよ」
ーー他のレーベルとも話はしたのですか?
「もちろん、メジャー、インディを問わずね。だけど最終的にはインディのままでいくのがいいんじゃないかって思ったんだ。とりあえず自分たちの名前や広告を出してくれるレーベルだったらね。オレたちは年がら年中ツアーをしてるだろ?新作が出たことをしっかり告知してくれさえすれば、あとのことはオレたちでがんばるだけだからさ」
ーータイトル曲の“Steady As She Goes”の“She”とは、Epitaphのことではないですよね。取りようによっては、かなりの恨み節ですが。
「ハハハ(笑)。みんな同じことを聞いてくるよ。だけど、誰か特定の人を指してるわけじゃないよ。ただの隠喩表現さ。昔の海賊がよく使った言い回しに近いんじゃないかな。“彼女(=船)がいくままに進路を変えず安定した航海”といった意味のね。で、オレたちの場合には、“She”は人というよりもむしろ、ツアーのことを指してると思うよ。なにせしょっちゅうロードに出てるし、10年以上同じような生活を続けてるからね。だから、“ツアーを続ける限り安泰だ”ってニュアンスにとってもらえればって思うよ」
ーーライヴっぽい生っぽさと、スタジオワークならではの緻密さが、スリリングに駆け引きするアルバム、というのが本作の感想です。各パートが自己主張しながらも、バンド内での役割をきちんと果たすことで立体的なサウンドが形成されてるというか。今作をセルフプロデュースした理由は?
「そうだね。制作する前にどういうサウンドにしたいのか青写真ができてたことが大きいかな。狙いとしては、君が指摘した通りさ。で、自分たちでデモを録ったら、ライヴ感のあるいいものが作れてさ。それなら、自分たちでやってみようということになったんだ。ガース・リチャードソンやジョン・アヴィラといった有名プロデューサーとも仕事をしたけど、結局彼らもレコードに再現しようとしたのは、オレたちのライヴ感やエネルギーだったからね。最終的な仕上がりとしても、予想以上のものになったんじゃないかな」
ーー制作としては、いつ頃からどれくらいの期間行われてたんですか?
「曲作りを始めたのが8ヵ月前で、レコーディング自体は3週間ぐらいだったかな。今回は、自分たちの住んでる、近所のスタジオで録音したこともあって、気楽な雰囲気で作業を進められたよ。みんなひとつの部屋に集まって、誰かがリフを弾き始めたら、みんながそれに肉づけしていくんだ。それぞれ自分の役割はわかってるからね。そうやってスタジオにこもって毎日ジャムってたら、思いのほか曲が早くできてね。自分たちでも驚いたくらいさ。メンバーそれぞれが、早く新しいアルバムをリリースしたいって強く思ってたんだろうね。レーベルを移籍して、セルフプロデュースでやることも決まってたから、気分的に盛り上がってたことも大きいんじゃないかな。レコーディングももちろん、トントン拍子だったし」
ーー確かにブランニューなスタートといった雰囲気は、随所に感じられますよね。
「そうだね。このバンドを再構築してる感じというか。それに、最近スゴく若いコがライヴにきてくれてることに気づいたんだ。14、5歳の子どもたちだよ。オレたちが活動を始めた10年前とか、この子たちはまだ“バーニー”(アメリカの子ども向けのTV番組に出てくるキャラクター)の歌を聴いてたんだろうね(笑)。でも、若い子たちに向けてプレイできるのはうれしいよ。オレたちとしても初心に戻った気持ちになれるからね」
ーー最後に、今後のスケジュールで決まってることがあったら教えてください。特に来日公演はいつ頃になりそうですか?
「うーん。まだ具体的なスケジュールは出てないけど、日本にいけるのは、クリスマス休暇明け、来年の1月ぐらいになるんじゃないかな。それから実は最近、ディズニージャパンの仕事をしたばかりなんだ。若手パンクロックバンドを集めたコンピなんだけど(『DIVE INTO DISNEY』/2002年発売)、“I Wanna Be Like You”(映画『ジャングル・ブック』提供曲)をレコーディングしたよ。それって、日本でしか手に入らないコンピだと思うよ」

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