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【2020.11.03更新】

GOJIRA’s cover issue

文・有島博志

日本正式デビューは5th『L’ENFANT SAUVAGE』 (邦題『ランファン・ソヴァージ~野生の少年~』/2012年)で、と欧米デビューとの間には11年もの長い“タイムラグ”があったフランス産メタルバンド、GOJIRA。自分はその彼らと4th『THE WAY OF ALL FLESH』(2008年)で出会った。

こういうのもなんなんだけど、このCDをサンフランシスコ出張にいった際、ダウンタウンの中心地にあった大型CDショップチェーン店で偶然見つけ、購入した。ちょうどお店が閉店セールをやってて、ディスカウントされてて安かったから、というのもあったし、バンド名だけは聞いてた。GODZILLAじゃなく、GOJIRAだと(笑)。
ライヴ観戦などの仕事がなかったため、その夜は投宿先のホテルの部屋でPCで購入したGOJIRAを含むCD数枚を一気に試聴した。でだ、GOJIRAには響いた、相当響いた。心底カッコいいと思った。「オレはなんで今の今まで彼らのことを知らなかったんだろう!」とも。
ジョー・デュプランティエ(vo,g)がデスヴォイスであること、曲展開の起伏が複雑で激しいことからか、調べてみたらプログレッシヴデスメタルというとあった。ただ、デスメタル度も、プログレ度もそれぞれそんなに濃ゆくなく、混ざり具合のバランスがほどよく自分好みだったし、極めて“へんちくりん”(もちろんいい意味で)なリフやその展開にけっこう惹かれた。ヴォコーダーかオートチューンを噛ましジョーの声色を変えたエレクトロチューン“A Sight To Behold”も面白かった。リリース元はフランスのメタル専門レーベル、Listenable Recordsで、US盤はかのProsthetic Recordsが流通してた。日本盤化はされてなかった。日本盤化されないと、情報を掴むのは容易じゃない。それから少しして朗報が舞い込んだ。バンドがレーベルをRoadrunner Recordsに、マネージメントオフィスをSLAYERらが所属するRick Sales Managementに移籍したのだ。そして、2012年6月に『L’ENFANT SAUVAGE』が発売された。
初めて日本盤化もされた。

本作は期待通りの、イヤそれ以上の出来で、第一聴時感極まったほどだ。Roadrunner、そしてRick Sales Managementに移籍と“お膳立て”も整ったと感じ、「彼ら今後間違いなくクる!」と確信した。で、ファンの受け止め方はどうなんだろう?と、ライヴを初体験しにアメリカに飛んだ。2012年8月17、18の2日間、アイオワ州、ウィスコンシン州の2都市限定で開催されたKnotfestにGOJIRAが出たのだ。確か2ndステージだったと思う。バンドにまださほどUSツアーの経験がなく、その名や存在が知れ渡ってなかったことが大きかったんだろう、正直客席からの反応はイマイチだった。それでも自分には観応え十分だったし、大いに楽しめた。そして、思った。「そんな遠くない将来に、バンドにGrindHouse magazineの表紙に登場してもらいたいな!」と。
それが現実のものになるであろう、サポーティヴな出来事がその後続いた。バンドの初来日が決まったのだ。ラウパー15への参戦を主軸に、その直前にEXTRA SHOWとして東京、大阪で大先輩のSLAYERと一緒に単独公演も行ったのだ。サポートバンドの場合、持ち時間は30分、長くても40分と相場は決まってる。だけど上記した通り、両バンドとも同じマネージメントに所属し、かつマネージメントがGOJIRAに相当力を入れてるなによりの証拠だ、GOJIRAの持ち時間は60分と異例中の異例のカップリングライヴだった。この時点で自分の腹は決まってた。「次作発売のタイミングでGrindHouse magazineの表紙に登場してもらう!」と。そして2016年6月、6th『MAGMA』は発売された。

悔やみに悔やみきれなかったのだけど、『MAGMA』の日本盤化が見送られたのだ。さすがに寝耳に水だったけど、夏だろうが秋だろうが、フェス参戦は洋楽バンドが日本でブレイクする上において特効薬的ツールとされてきたことが完全に崩壊したことを如実に物語ってた。あのGHOSTも夏フェス参戦はしたものの、その後の作品『PREQUELLE』(2018年)は見事に日本盤化が見送られたように。
事実、周囲からの「今回は表紙は見送った方がいいのでは?先に延ばした方が得策なのでは?」との反対意見もあったのだけど、確かに輸入盤しかなくて表紙実施なんて普通あり得ないんだけど、あえて踏み切りGrindHouse magazine表紙を実施した。2016年5月31日発行のVol.96だ。

アメリカでは『MAGMA』でさらに評価、注目度はかなり高まってる。第59回グラミー賞で『MAGMA』がベストロックアルバム部門に、シングル“Silvera”がベストメタルパフォーマンス部門にそれぞれノミネートされた。こうした動きが少しでも日本に入ってきてくれればと願うばかりだ。
ちなみに、この画像は初来日時に撮ったジョーだ。

photo by Hiro Arishima

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