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【2020.11.23更新】

TOOL’s cover issue

文・有島博志

TOOLは自分的に世界に数多くいるバンドのなかでもっとも好きなバンドのひとつだ。なんとも言えない、あの異形なサウンドにはまるで底なし沼に全身を引きずり込まれ、そう簡単には抜け出せなくなるような“呪縛感”がある。6曲入りデビューEP『OPIATE』(1992年)のときはまだそこまでではなかったものの、1stフルアルバム『UNDERTOW』(1993年)以降は作品が続くに従ってその“覚醒性”は強く、そして濃くなっていった。

とにかくこのバンドには、音楽業界的“普通”“当たり前”みたいなのがほぼ通用しない。初期の頃はまだしも、2ndフルアルバム『ÆNIMA』(1996年)以降は特にそう。まずシングルのコマーシャルリリースがされなくなったし、それに合わせてMVの製作も積極的ではなくなっていった。つまり、それまであって当たり前だった手段を用いて自己宣伝することをよしとしないバンドなのだ。こういうバンドはこれまでのロック史上において初めてだし、おそらく今後2度と現れることはないだろう。それだけTOOLは“特殊”で“希有”なバンドなのだ。
そういう性格のバンドゆえ、言わずもがな取材するのも、また写真撮影するのもハードルが高く、容易じゃない。
『ÆNIMA』発売直前期にこんなことがあった。ニューヨークのマンハッタンの某高級ホテルで取材が予定されてた。アメリカ本国を除く世界各国のメディアがその場に集ってた。そのときヨーロッパのどこかの国のTVクルーが取材でメンバーを怒らせてしまい、その日予定されてた映像取材はそれが原因ですべてキャンセルされてしまったのだ。自分の取材も映像収録絡みだったのだけど、当然映像収録はNGとなったものの、紙媒体用の、という制約つきで取材は受けてくれた。当時はまだ、GrindHouse magazineが創刊前だったので、その取材記事は主にストリートファッション誌に掲載してもらった。
写真撮影に関しては相当頑なだ。自分が写真撮影の現場に立ち会えたのは、3rdフルアルバム『LATERALUS』(2001年)発売に伴いロサンゼルスで実現したフォトセッションの場1回きりだ。それもGrindHouse用のではなく、あくまでもJPレコード会社向けのオフィシャルユーズだった。
そういった流れから、いつしか「彼らをGrindHouse magazineの表紙に」と思うようになった。そして、「彼らを日本で最初に表紙にする音楽誌は他誌じゃない、弊誌だ!」と静かに鼻息を荒くしてた(笑)。
そんなとき朗報が飛び込んできた。4th『10,000 DAYS』(2006年)発売に際し、作品の試聴会と取材でメイナード・ジェイムズ・キーナン(vo)、アダム・ジョーンズ(g)、ダニ-・ケアリー(ds)の3人がプロモーション来日するというのだ。最初はそれが本当に実現するのか否か半信半疑だったところもあったのだけど、むしろ絶好の機会と捉え、弊誌初表紙を決めた。2006年5月31日発行のGrindHouse magazine Vol.36だ。

メンバー4人の個別インタヴュー記事を掲載した。メイナード、アダム、タニーのはプロモ来日時に、ジャスティン・チャンセラー(b)のは電話で話を聞いた。そして、メンバーがゲスト参加した他アーティストの作品などまでをも網羅した、限りなく完全に近づけたディスコグラフィにも挑戦した。
当時、正直言うと「TOOL表紙に」という自分の意向、希望に対しては弊社内からも、また近しい外部からも「いかがなものか」というネガティヴな意見が大多数上がった。その理由はどれもこれも100%「本国アメリカでの人気度、知名度は高いけど、日本では全然。実績がまったく伴ってないから」だった。そんなのこっちは百も承知で、「だからこそ“今”表紙をやるべきだし、またやりたい」と突っぱね続けた。事実、『UNDERTOW』発売後に初来日公演が決まり、発表もされたけど、少ししてから“中止”のアナウンスがされた。チケットセールス不振が、その理由だった。バンドが実際に初来日したのは、それから8年も経った2001年夏のフジロック参戦でだった。
2006年5月、『10,000 DAYS』が発売された。大型CDショップチェーンの都心の数店舗の旗艦店では大々的に展開されてて、「おお、レコード会社頑張ってるなあ!」と感動させられた。さらに、その展開の周りには、TOOL初表紙の弊誌がズラ~~~っと小盛りの平積み状態で並べられてるのを見て、より感動度が倍増したことは言うまでもないだろう。もう、14年半も前のことだけど、今なおいい思い出だ。そして、棺桶のなかにまで持っていくことだ(笑)。

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