【2020.10.20更新】
YELLOWCARD’s cover issues
文・有島博志
惜しまれつつ2017年に解散したYELLOWCARDとは、特に4th『OCEAN AVENUE』(2003年)から6th『PAPER WALLS』(2007年)の間近かった。よくライヴを観たし、取材もしたし、なかでもショーン・マッキン(electric violin)とはウマが合った。いつだったか、ロサンゼルスのメルローズで偶然出くわし、スタバで1時間ほどお茶したこともあったほどだ(笑)。
バンド、そしてバンドの音楽にグイっと傾倒したのは、4thのド頭を飾り、名曲の誉れ高い“Way Away”だった。ポップパンクのそれまでの概念を軽々と超える“奥深い美しさ”があり、これに一発で持っていかれた。
“Way Away”を引き金に本国アメリカで大ヒットし、4thはこれまでに180万枚以上を売り上げ、見事プラチナディスクに輝いた。この最中にバンドのライヴをアメリカで観る機会があった。ハリウッドから車で片道2時間半以上かかるリヴァーサイドの、会場名は忘れてしまったけどスポーツアリーナで。収容人数が“万クラス”のデカバコ、そして大観衆の大変な盛り上がりようは、バンドが只今大ヒット中なんだ、ということを即座に、かつ強く印象づけられたことを覚えてる。加えて観戦中こんなことがあった。セット中盤、演奏が止み、ステージ中央に白のグランドピアノが運び出された。そして、当時まだツアー要員だったINSPECTION 12のベースのピーター・モーズリーがピアノを弾き始めた。どの曲をやったのかまったく記憶にない。だけど数曲続いたその小ピアノセットは、大観衆にはまさにビッグサプライズに。メランコリックなサウンドにさらなる“荘厳さ”をもたらし、それまで知られてなかったバンドの新たな一面を強烈にアピールしてた。これは自分にとってとても大きく、「バンドになにかしたい!」という強い喚起力になった。
余談だけど、そのツアーのサポートバンドのひとつがFALL OUT BOY(FOB)だった。バックヤードを歩いてるとき、偶然FOBのドレッシングルームの前を通りかかったら、ピート・ウェンツ(b, vo)がぼっちで静かに読書にふけってた。声をかけるのを一度は躊躇ったけど、「せっかくだから」と思い直して声をかけ、しばし他愛もない話をして楽しんだ。いつ、どこで、誰に会うかわからない、の典型的な例だ。
それからしばらくして、バンドが4thに続く新作を出す、という話を聞いた。まだ音源は聴けてなかったけど、「よし、表紙に登場してもらおう!」と早々と決めてた。雑誌にとって表紙とはまさに“顔”で、とても大事、重要だ。よって「せめて新音源を聴いてからの判断でも遅くはない」という意見が出て当然だし、ある意味それが常識でもあるわけだけど、やっぱ自分は変わってるとつくづく思う(笑)、自分にとって「新音源を聴いてから」というのは決定打的な判断にはならない。もちろん、ときと場合にもよるのだけど…。
でだ、「ホラ、言わんこっちゃない」という声が聞こえてきそうだけど、発売予定時期の直前になって急遽、新作の発売が延期に(汗)。発売延期は特別珍しいことじゃないけど、さすがに当初は「ぇっ?」となった。それでもフェス参戦での来日があったことから「新作発売前にそれまで以上に多くの人たちにバンドを知ってもらうには絶好の機会だ。きたる新作発売につなげていこう!」と予定通り表紙登場を敢行した。それが下記の初表紙登場号だ。2005年9月30日発行のVol.32だ。取材、写真撮影は、その来日時に行ったもの。ライアン・キー(vo, g)とショーンのインタヴュー記事を掲載したのだけど、ショーンのを有島が担当した。
4thに続く5th『LIGHTS AND SOUNDS』は当初の予定より約半年ズレて、2006年1月に発売された。それに合わせて2006年1月31日発行のVol.34で再度表紙に登場してもらった。結果論だけど、1号置いての2号連続表紙となった。弊誌にとって初めてではなかったものの、しかし珍しいケースだ。
この『LIGHTS AND SOUNDS』で、布陣がそれまでとは少々代わってた。サポートメンバーだったピーター・モーズリーが正式ベーシストとして迎えられ、2ndギタリストにライアン・メンデスが参加した。バンドにとって初のコンセプト作であり、また音楽的にもポップパンクを卒業し、より進化、発展をとげてることもあり、メンバー全員の個別インタヴュー記事を掲載した。弊誌にとって、メンバー全員の個別インタヴュー記事掲載は、あとにも先にもこのときが初めてだ。有島はショーン・マッキンと、新加入のライアン・メンデスをインタヴューした。実は2005年のフェス来日の前にはすでに2ndギタリストのベン・ハーパーは脱退。ただ、『LIGHTS AND SOUNDS』では8曲でギターを弾いてる。よって、ライアン・メンデスはこの作品には不参加だ。
続く6th『PAPER WALLS』は、2007年7月に発売された。この作品を最後にメジャーのCapitol Recordsより離脱、バンドは次作よりHopeless Recordsに移籍する。
余談だけど、バンドをCapitolと契約したのは、A&Rマンのロン・ラフィット。MEGADETHの4th『RUST IN PEACE』(1990年)の頃までのマネージャーだった人物だ。
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