Live Report_ADRASTEA at LIVE HOUSE CRESCENDO

文/有島博志

11月30日、吉祥寺のライヴハウスCrescendoで開催のイベント、第一次戦国大合戦ー武蔵野の役ーに、名古屋に活動基盤を置くシンフォニックメタルバンド、ADRASTEAが出演するというので観にいった。
この夜が彼らにとって活動休止前の最後のライヴだった。


客席に入るドアを開け客席内に一歩足を踏み入れるや、すでに客電は落ち、
場内は暗転。間髪入れずに1stミニ作『Pathetic Bluemoon』(2018年)の
ド頭を飾るインスト“Pathetic Bluemoon”が流れ出した。
オンタイム19時10分のスタートだ。場内はなかなかの盛況っぷりで、
人をかき分けつつ奥へ奥へと押し入っていった。
すると“The Wings of Gurdian Deity”へとなだれ込んだ。
会場限定2ndシングル『The Bringer』(2019年)収録曲だ。
そしてタイトル曲“The Bringer”、1stフル作『The Ruins Of Reminiscence』(2016年)から“Prayer In Dawn”と3曲続いた。

ステージ中央に置かれたお立ち台上に女性シンガー、Yukaが上がり、その向かって右側にMizuno(g)が、Yukaの左側手前にX.Murai(key)が、やや後方にYasu(b)が立ち、ステージ中央後方にはTam(ds)がガッツリと座り、全員がひとつになり観客たちと向き合いながらプレイをブーストしていく。前列の観客たちもそれに呼応し、拳を上げ、彼らに向かって突き出しながら“気”を送る。

実は自分は『Pathetic Bluemoon』発売タイミングまで、
ADRASTEAの音源を聴いたことがなかった。それどころかバンド名、
その存在すら知らなかった。しかし、『Pathetic Bluemoon』の音源を
聴くや速攻で気に入り、即渋谷CYCLONEでのライヴを観にいったほど
だった。こういう経験は滅多になく、非常に珍しい。
重厚さ、大仰さ、一点の影を内包する美麗さなどが織り成す極めて
欧州調の音世界ーー。Yukaの中高音域主軸な歌声、振り幅著しい歌メロ、
アップテンポ中心な曲調、フォークメタルを思わせる“コミカル”な

一面を曲によって垣間見せるところなどが自分には
ストレート超“ド”ストライクで、完全に持っていかれた。
そして音源を一聴しただけでライヴを観にいく手はずを進める、
という“衝動性”をもたらしたのだった。

“Prayer In Dawn”からMCタイムへと突入。主にYukaとX.Muraiのトークだったのだが、まぁまま見受けられることだけど内容はバンド内でしかわからない、もしくはその周辺にしか通じないことが多く(笑)、そうかと思うと「もうすぐクリスマスですね」と“赤鼻のトナカイ”を超絶ショートヴァージョンをなんでか3回もやり、続いて「クリスマスの次はお正月ですね」と「もういくつ寝ると~♪」の“お正月”をこれまた超絶ショートヴァージョンでやった。ここまでくるともう、場内至るところから失笑が漏れたほど(笑)。活休前のライヴにつきもののしんみりさ、しみじみさなどは皆無だった。

その流れからガラリと雰囲気を変え、一気にラストスパートだ。
メンバー全員グイッとギアを踏み込んだように走り、客席を煽っていく。客席も当然それに応えていき盛り上がる。曲は1stフル作から“Sleep Of Insomnia”、続いて“Night Gloria”。客席から観る限り、ステージ上のメンバー一人ひとりの表情や動きなどに特段“なにかある”とは感じることはなく、きっといつも通りなんだろうと思えた。


結成6年強…その歳月は短くも長い。彼らはバンドとしてさまざまなことをやってきた。
“活休前最後のライヴ”中に彼らの胸に去来してた想いとはいったいどういうものだったんだろう、と考えつつ観てた30分だった。

セット終了から少ししてメンバー全員に会え、話を聞くことができた。
今回“活休”を決断したのは「あくまでも音楽的創作活動に専念するため」とみな口を揃えた。「ボクたちは曲作りにとにかく時間がかかるんです」とメインソングライターのX.Muraiと、Mizunoも言う。
“活休”がポジティヴでクリエイティヴな理由からということで少し安心したけど、一日も早く復帰してくれることを願ってやまない。


なお、ライヴ中に一切“活休前最後のライヴ”を思わせるような
しみじみ、しんみりモードを漂わさなかったのは
「しんみり、しみじみしても…という気持ちもあったし、
第一今晩のイベントは我々主催ではなかったので」とX.Murai。

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