【Live Report_FUMA FEST Vol.2】

FUMA FEST Vol.2 観戦リポート
2018年12月8日(土) 新木場1stリング

文:有島博志
写真提供:㈱DDTプロレスリング


プロレスと自分をつなぎ、結ぶ線は細い。幼少の頃、TV中継をよく観てたし、父親に手を引かれ後楽園ホールに何度かいき試合も観戦した経験もある。その頃のお気に入りレスラーは善玉外国人レスラー、“人間風車”との異名をとったイギリス人ビル・ロビンソンだった。しかし、その後“プロレス熱”は急速に冷め、興味対象はほかに移ってしまった。なにがきっかけだったのかは記憶にないのだけど、幼かったゆえの“ありがちな単なる移り気”だったのだろう。 そんな自分が再びプロレスという言葉と対峙したのは、それからずいぶん経った、今現在の仕事に就いてから。アメリカでメタルやロックの楽曲がプロレスラーの入場テーマ曲に使われてる、という話が頻繁に聞こえてきたし、アメリカのプロレス団体、WWE(当時WWF)が監修したプロレス×メタルなコンピも発売されてた。ザ・ロック主演映画『スコーピオン・キング』(2002年)のサントラはその究極の1枚でGODSMACK、SYSTEM OF A DOWN、SEVENDUST、NICKELBACKらが顔を並べた。そうした一連の動きや物的証拠などから、自分はプロレスとメタルの間には確かな“接点”“異種交配”があると強く感じた。 90年代中盤、メロディックパンクロックが勢いづき、巨大ムーヴメント化したときのこと。その背景にはスケボー、スノボのビデオにメロディックパンクロック勢の音楽、楽曲が使われ、アクションスポーツ愛好家たちの間にも広がり、巨大ムーヴメント化に大きく貢献した、ということがあった。まさにアクションスポーツと、メロディックパンクロックとの間に育まれた“クロスカルチャー”だ。アメリカでのプロレスとメタルの“くんずほぐれつ度の強さ”もそれと同じに違いない。 ただ、お国柄とか習慣とか環境とかの違いなんだろうか。日本ではなかなかこの“クロスカルチャー”なるものが育まれにくく、根づきにくいという“現実”が横たわる。そうしたなかプロレス×メタルなイベントが開催される、と聞いた。プロレス団体BASARAに所属するレスラー、FUMAが主導・先導するFUMA FESTがそれだ。今回Vol.2となる。昨年12月8日に新木場1stリングに観にいった。 FUMAがフロントに立つDragon’s Denが一番手。会場着が遅れ後半2曲しか聴けなかった。ただ、少し前に横浜の黄金町SUREにて初観戦してる。実にストレートアヘッドなメタルサウンドを聴かせる、今後キャリアを綴っていくバンドだ。 続いてステージに上がったのが、The Kandarivas。ヴォーカル&ギター、ドラムス、パーカッションなる変則的なトリオ編成で、重心低めのヘヴィロック寄りのサウンドを信条とする。プレイやパフォーマンスもユニークだし、東京・神田が地元でバンド名も神田川をもじったThe Kandarivas。ハッピ姿のメンバーも、と下町 & 地元愛に満ちたバンドだ。ぜひまたライヴを観たい。 The Kandarivasの演奏中後半にレスラー、ジンベイザメ~ンが登場、リングへと上がることで、このイベントの特性がグイッと頭をもたげ始めた。そのままプロレスの試合へと雪崩れ込み、ナカノ・スタンレーとの一戦がスタート。コミカルで早々に場外乱闘を繰り出すなど笑いを誘うエンタメ性濃厚な微笑ましいファイトだった。 その後、場内を歩き回ってみた。場内に入り左側にステージが。その真向かいにリングがあり、場内のド真ん中に設置されてる。そして、リング奥の真向かいに階段型の客席がある。天井も高い。明らかに普通のライヴ会場とは違い、作りは完全にプロレス会場のそれ。よってバンドパフォーマンスから放たれ、生まれる臨場感や肌感覚などは、普段ライヴ会場で味わうそれらとは異なるものだった。これは興味深かった。 場内探索中に、ALICE IN HELLが長尺曲“CRY FOR WAR”で勢いよく駆った。昨年、ヨーロッパでCDデビューを飾り、来日海外アーティストとの度重なる共演など彼らは今、徐々にだけど着実に歩を前に進めてる。しっかり地に足をつけた演奏はより説得力を増し、客席を大いに盛り上げた。“Judges”のときに次試合のレスラー、関根龍一と下村大樹がステージ裏から姿を現し、曲が終わったと同時にリングに上がり、ナカーツ・ディッキンソン & アベ・ハルフォード組と格闘しだした。第一試合と同じく場内のあちこちから笑いが起こるエンタメ性に富んだマッチだった。 このあとバンド演奏が2組続く。一昨年秋に1stアルバム『Time To Depart』を出したBLACK SWEET。甘味でオーセンティックなハードロックバンドで、“歌もん”とも言えるヴォーカル、サウンドは場内を和ませた。そして続いたのが日本刀。どこまでがジョークでどこからがシリアスなのか判別困難で、ときとして「ギャグバンド?」と思わせられるところもあった。リッキー・フジ(vo)がレスラーということもあり、演奏が終わった途端、リッキーはトランザム★ヒロシとの試合に突入した。この試合より“お笑い度”は薄まり、迫真の展開が繰り広げられるようになった。 再びバンド演奏に戻り、Barbatos、兀突骨が相次いだ。兀突骨のライヴを観るのは今回で2度目。中国の通俗歴史小説『三国志演義』に登場する架空の人物からバンド名をとったと思われるトリオ編成の彼らは、豪傑風武士というテーマを根底に敷きつつ激烈デスメタルをやる、というまったく独自のアプローチを持つ。MCや歌詞、そしてステージコスチュームにそのテーマが顕著で時折、高畑治央(vo,b)の曲間MCが笑いを買う。この“FUN”と、暴虐極まりないソリッドな轟音のバランスが心地よかった。セットの最後に披露された“文物ト戦”で久保佑允 & SAGATが乱入し、塚本拓海と宮本裕向とのセミファイナルマッチに挑んだ。よりシリアスな白熱の試合だった。 出演バンドの持ち時間は20~25分、試合は20分。それぞれの間の転換タイムにはヘヴィメタルお笑い芸人、タロット占い師として知られる橋山メイデンとカッチャンがMCとしてリングに立ち、い~流れを作り出してた。 そして、いよいよ今回のFUMA FEST Vol.2のファイナルを迎えた。ジャパニーズアンダーグラウンドメタル界においてリスペクトされて止まない大ベテラン、HELLHOUNDの登場だ。今回ライヴは初見だったけど音源は聴いてた。個人的にはいい意味で超オールドスクールなサウンドなのだけど、彼らはかつてのメタルが「メタルとはこうあるべき!」「こういうのをメタルって言うんだよ!」と頑なに信じて疑わなかった要素のすべてを持つプレイ、サウンドを目一杯聴かせ、客席内からヤンヤヤンヤの声援を送られてた。なぜ、彼らが長きにわたりリスペクトされてきてるかがわかったような気がした。セット後半“Warriors of Rising Sun”の最中のときにFUMAがステージに出てきて、そのままザ・グレート・サスケとのメインイベントをスタートさせた。試合後のマイクパフォーマンスでFUMAがサスケに向かって「アナタはかつてヘヴィメタルを冒涜した」と言い放った。サスケは即座に否定したけど、そうしたなにか因縁めいたこともあったんだろう、試合は両者が真っ正面からぶつかり合い、ときにガッツリ四つに組んだ、それはそれは熱いものとなった。途中パイプ椅子、可動式折りたたみ机が凶器として使われるなどとてもハードコアな展開も観られた。結局FUMAが負け、ザ・グレート・サスケが勝利したのだけど、FUMAはリングの上からFUMA FEST Vol.3開催を確約し、場内から大歓声を浴びてた。 イベントトータル時間はゆうに5時間を超えた。出演バンド計8組ーー初めて観るバンドも少なくなく、なかにはまた観たいと思うバンドもいたなどの“新発見”があった。プロレスの試合はとにかくリアルで楽しかったなどの、また違う“新発見”があった。このバンドの“新発見”と、プロレスの“新発見”が相互作用し、プロレス×メタルの“クロスカルチャー”がさらに育まれていくんだろう。今からFUMA FEST Vol.3開催が楽しみだ。

Dragon’s Den
The Kandarivas
第1試合_ナカノ・スタンレーVSジンベイザメ~ン
ALICE IN HELL
BLACK SWEET
兀突骨
セミファイナル_久保佑允&SAGAT VS 塚本拓海&宮本裕向
HELLHOUND
メインイベントハードコアマッチ_FUMA VS ザ・グレート・サスケ

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