PHOTO GALLERY 第17回

【2022.05.11更新】

ありし日のジェフ・ハンネマン…

text by Hiro Arishima
photo by Mayumi Nashida(live), Yuki Kuroyanagi(group)

ジェフ・ハンネマンが亡くなってからもう、9年の歳月が流れた。2011年、右腕を毒蜘蛛に噛まれ、壊死性筋膜炎を発症した、という一報を聞いたとき心底驚いたのを今でも克明に覚えてる。そういう病名を初めて聞いたし、発症した原因もあまり耳にしたことがなかった。ジェフは即座にバンドを離脱、療養に専念し約2年間闘病生活を送った。しかし、2013年5月2日、肝不全により帰らぬ人となった。49歳だった。肝不全と壊死性筋膜炎とが関連性があるのかはわからない。

ジェフには生前、何度か会ったことがある。うち2度は対面取材もしてる。最初は、5thアルバム『SEASONS IN THE ABYSS』(1990年)発売に伴うワールドツアーの一環で実現した1990年12月の初来日公演のとき。その最終公演となった11日の大阪公演に同行したのだけど、東京から新大阪への移動の新幹線の車中で。取材相手はジェフと、ケリー・キング(g)。どういう話をしたのかの記憶がまったくないのだけど、サウンドチェックで会場の大阪フェスティバルホールに入る前「少しでも大阪を見たい」という声がバンドから出たので、“大駆け足状態”で大阪城を見にいったのを覚えてる。メンバー4人と、日本公演に同行してたクルー2人の計6人は、時間に限りがあるなかでもそれなりに楽しんでる様子だった。
2度目のジェフへの対面取材は、1998年7月の3度目の来日のとき。相手はジェフとトム・アラヤ(vo,b)。時期的に人気アメコミを原作とした映画『SPAWN』のロック×エレクトロ的サントラが発売された直後だった。収録のMARILYN MANSON×SNEAKER PIMPS、KORN×THE DUST BROTHERS、THE PRODIGY×トム・モレロといったコラボチューンにも響いたけど、SLAYER×ATARI TEENAGE RIOTのコラボチューン“No Remorse(I Wanna Die)”は完全に突き抜けてて破壊力満載でトバされた。今聴いてもむちゃくちゃカッコいい!

SLAYER×ATARI TEENAGE RIOT/“No Remorse(I Wanna Die)”

SLAYERがエレクトロアーティストとコラボしたうえに、こうした異種格闘技的コンピに参加するということ自体かなり意外だったし、驚いたので、取材中に質問のひとつとして参加した背景を聞いた。すると、ジェフはこう素っ気なく答えた。「マネージャーに“やってくれ”と言われたからやっただけ。それだけさ」

あと、こんな場面も目撃した。ラウパー09参戦で8度目の来日をしたときのこと。そのときはSLAYERの取材や写真撮影はリクエストしてなかったのだけど、プレスエリアで別のアーティストの取材を待ってるとき、偶然間近でSLAYERのグループ写真の撮影が行われてた。程なくして撮影が終了、続いて待機してた音楽媒体との取材となる流れだったのだけど、その輪からスッとジェフだけが抜け出て、プレスエリアの出口に向かって歩き始めた。その際ジェフと目が合うと笑いながらペロッと舌を出したのだ。するとJPレコード会社のスタッフの間から「あれ、ジェフは?どこいっちゃったの~?」との声が。「ぁっ、ジェフ取材をブッチしたな」と即ピンときた。その数時間後にJPレコード会社の担当氏に聞いたところ案の定「ジェフにヤラれました…」と。
それからもわかるようにジェフに限らず、SLAYERは基本取材や、写真撮影に対してけしてポジティヴじゃない。ケリーはときにバンドのスポークスマン的役割を果たしてくれることもあるのだけど…。
今回、ジェフの9回目の命日を迎えるに際し、「確か未公開のライヴ写真があったハズ」とふと思い、探してみると出てきた。2000年夏に全米各地を転戦したフェスツアー“TATTOO THE EARTH TOUR”に、SLAYERがコヘッドラインとして出たときのものだ。SLIPKNOTが大トリに据わり、ほかにSEPULTURA、SEVENDUST、HATEBREED、MUDVAYNE、(hed)pe、AMENらが並び、ほとんど“裏オズフェスト”のようだった。GrindHouse magazine Vol.2でカリフォルニア州サンバーナディーノ公演の模様をリポートしてる。

ここにある4点は、その号には未掲載のものだ。

トム・アラヤ
ジェフ・ハンネマンとケリー・キング
ジェフ・ハンネマン
トム・アラヤとデイヴ・ロンバードとケリー

このときのSLAYERのパフォーマンスの模様をこう書いてる。
「サイドステージ出演全バンドのパフォーマンスが終了したため、大方の観客はメインステージ前に集結。お目当ては当然、大王SLAYER。で、夜6時ジャストに“マンデイトリー・スーサイド”で、巨大なノイズ塊が瞬発力を伴いPAスピーカーから飛び出してくるような錯覚に陥る、あの鉄壁なライヴが客席を直撃。凄まじいパワーに強烈なテンションとアグレッションが束になって突進してるようだった。その後“ウォー・アンサンブル”“ビター・ピース”“デスズ・ヘッド”と続け、彼らは60分間、走りに走った。客席も大いに盛り上がってた」
なお、自分が写真撮影の現場に最後に立ち会えたのは、バンドがラウパー09参戦で8度目の来日をしたとき。バンドがステージに上がる直前にステージ裏で、と言われたのだけど、ホントにステージに上がる直前で与えられた時間はわずか5分!与えられた時間が時間だ、ホンの数点しか撮れず。そのうちの1点がこれだ。バンドが放つ緊張感が強烈で、肌がピリピリしたほどだった。で、撮影が終了するやバンドはメンバーひとりひとりがゆっくりとステージに上がり、少ししてパフォーマンスを始めた。とてもリアルな瞬間だった。

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