ポスター展示館 第8回

【2020.09.07更新】

文・有島博志

言うまでもない、衝撃のデビュー作『RAGE AGAINST THE MACHINE』(1992年)のUS製ポスターだ。その音楽性、歌詞、そしてこのジャケとすべてが衝撃的で画期的だった。この作品がシーンに及ぼした影響は計り知れなく大きい。まさに不朽の名作である。
ジャケとして使われたのは報道写真だ。1960年代のベトナム戦争中、ベトナムが共産主義化するというドミノ理論を恐れたアメリカが軍事介入し、ゴ・ディン・ジエムを初代大統領に据え樹立した傀儡政権。ゴ・ディン・ジエムが敬虔なカトリック教徒であったことから仏教徒を激しく弾圧した。その政策にティック・クアン・ドック僧侶が抗議の焼身自殺をとげた瞬間を捉えた写真だ。過激な政治的メッセージや、猛烈な社会批判への姿勢をあらわにしたRAGE AGAINST THE MACHINEらしいジャケだ。
映像も残っており、ベトナム戦争を題材としたドキュメンタリー番組などで使われてた。僧侶がガソリンを浴び、弟子のひとりが火を灯し、全身が炎に包まれる。それでも微動だにせず拝み続ける僧侶のもとに大勢の仏教徒が駆け寄り、燃え盛る僧侶を拝むシーンは、それはそれは衝撃的で今なお脳裏に強く焼きついてるほどだ。ちなみに、ゴ・ディン・ジエムは1963年11月2日に起きた軍事クーデターで殺害された。
1996年初頭、BAD RELIGIONの9th『THE GRAY RACE』の取材でニューヨークのグリニッジヴィレッジにあるエレクトリックレディ・スタジオを訪れた際、ホスピタリティルームの壁にこのポスターが張られてた。“the”と“machine”の間にふきだしが書かれ、“pinball”とイタズラ書きされてた。これには笑った(笑)。
なお、『RAGE AGAINST THE MACHINE』は、2012年に20周年記念盤を発売した。ジャケはオリジナル盤とやや異なり、オリジナル写真の拡大版が使われた。日本盤は当初初回限定プレス発売だったけど、ほぼ即完だったことから再プレスした、というエピソードが残ってる。

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