ポスター展示館 第9回

【2020.09.21更新】

文・有島博志

かつてAMENが大好きだった。1990年代初頭に起きた“潮流”は、それまでに類を見ないまったく新しい音楽スタイルなどを数多く産み落とし、欧米のロックシーンを縦へ横へと激しく揺り動かした。その最中の時期に突然ロサンゼルスから出てきたバンドのひとつが、この、ケイシー・ケイオス(vo)率いる5人組だった。KORNやSLIPKNOTほかとの仕事で知られ、“The Godfather Of Nu Metal”との異名をほしいままにしたロス・ロビンソンのプロデュース、かつ彼のレーベル、I Amからグローバルリリースされた『AMEN』は、当時の自分にとってそれはそれは衝撃的だった。まさに一撃を喰らった、みたいな感じで、メタルと、UK初期パンクロックと、80’s USハードコアの間を自由往来するひしゃげた“パンク ‘n’ メタル”には完全にトバされた。

AMENは一度来日してる。記録が残ってないので不確かだけど、記憶によると『AMEN』発売から次作で3rdリリースとなった『WE HAVE COME FOR YOUR PARENTS』(2000年)の間か、それとも『WE HAVE COME FOR YOUR PARENTS』発売後のどちらかの時期だと思う。ちっちゃなライヴハウス、原宿ASTRO HALL(閉店)での東京one off only公演だった。
場内満杯じゃなかったものの、強烈なエネルギーが渦巻き、ものスゴい熱量だったことを今も覚えてる。ケイシーは小柄ながら名アジテーター、名パフォーマーぶりを実証してた。観客の煽り方、盛り上げ方などがハンパなく、観客を思うがままに操ってるかのようにすら見えたほどだ。世のなかにはびこる拝金主義に警鐘を鳴らした曲では、ケイシーはポケットから取り出した数枚の千円札を口のなかに押し込む、というパフォーマンスを見せ、『AMEN』のレコーディングセッション時にロス・ロビンソンとの間になにかしらの衝突があったようで、ライヴ中にMCで何度か「『AMEN』は買うな!」と言ってた。公の塲で自らの作品を買うな!と言うアーティストをこのとき初めて見た(笑)。

で、このポスター、US製『WE HAVE COME FOR YOUR PARENTS』のpre-orderを募る用の、縦44cm×横30cmの小型版。こういうビジュアルセンスも好きだ。経年による黄ばみも目立つ(笑)。当時のメンバーのサイン入りだけど、AMENがケイシーのソロバンド的色合いが濃かったことから、布陣の顔ぶれは常に流動的だった。
2004年に4th『DEATH BEFORE MUSICK』を発売、その後は自主で音源を出すも、2010年頃を境に徐々に活動ペースは落ちてきてる。未聴の人は、一度聴いてほしい。

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