RECONSIDERATION(再考論)第2回

【2020.10.05更新】

文・有島博志

90年代のロックシーンは、自分にとってとても刺激的な時代だった。聴く新しいタイプのロックの多くが斬新でカッコよく、仕事的にも実に自然にその方向に傾倒していった。ただ、業界的にはそうした流れはメディア的にいかがなものか?と周りからずいぶん叩かれた(笑)。今となってはいい思い出だし、仕事面においてこの時期が大きなターニングポイントとなったことは間違いない。自分の感性の赴くままに、ということにはやはりウソはつけない。
このMONSTER MAGNETには、その最中の時期に出会った。まさにモダンロック大躍進真っ最中の頃だったけど、彼らの音楽にはモダンロック的側面は……ない。それでもまるで足元を掬われるかのようにどハマりした理由を思い返してみると、彼らが自分の好きな、自分の音楽的根幹にあるいくつかのバンド、たとえばBLACK SABBATH、HAWKWIND、THE DOORSからの音楽的影響が強く、それらが生み出したメロディ感、楽曲スタイル、音作りに強く響いたからだと思う。彼らを知ったのは2nd『SUPERJUDGE』(1993年)だったけど、即その前の作品も聴いた。これまでにオリジナルアルバムを10枚残してきてるけど、個人的には初期4作品が好きだ。
1st『SPINE OF GOD』(1991年)は、Caroline Recordsより発売された。

上記した彼らの音楽的特性がまだ、緩~くしか反映されておらず、中心人物のデイヴ・ウィンドーフ(vo,g)の声もどこかか細い。“Sin’s A Good Man’s Brother”は、60年代後半から70年代後半にかけて一世を風靡した最強トリオ、“暴走列車”ことGRAND FUNK RAILROADのカヴァー。原曲は3rd『CLOSER TO HOME』(1970年)で聴ける。GRAND FUNK RAILROADもまた、大好きなバンドのひとつだったので、このカヴァーは好感度アップだった。
メジャーのA & M移籍第1弾の2nd『SUPERJUDGE』は1993年4月に発売された。

自分がMONSTER MAGNETに完全に持ってかれた究極の1枚、まさに決定打的作品だ。彼らの作品群のなかで1番好きな作品で、とにかくよく聴いた。ストーナーロック的な表情も見せつつ、ドープでおサイケでややスペーシーなサウンドは、1stより“純度”“濃度”を増し、まったく非の打ち所のない仕上がりになってる。エド・マンデルのソロワークも見事で、楽曲のよさをさらに引き立ててる。“Evil”は黒人ブルースシンガー、ハウリン・ウルフ(故人)の、“Brainstorm”はHAWKWINDのカヴァーだ。“Twin Earth”では彼らのキャリア初のMVが製作されてる。まさにどサイケだ。

『SUPERJUDGE』発売から2ヵ月も経たないうちに、ラッキーなことに彼らのライヴを観てる。1993年5月にオランダのアイントホーフェンで開催の野外フェス、Dynamo Open Airで。2日間開催の初日に出演、まだ日の高い時間帯に『SPINE OF GOD』収録曲でアップテンボなチューン“Snake Dance”でスタートし、上記した“Twin Earth”やカヴァーの“Evil”をやったのは覚えてる。
その数日後に彼らはイギリスにわたり、今は亡き老舗名門クラブ、マーキーで単独公演をやり、それも観れた。ライヴ中、ステージ後方に下げられたスクリーンにはずっと、“Twin Earth”のMVで見られるようなおサイケな映像が流されっぱなしで、さらに雰囲気を高めてた。開演前には取材はしてないけど、デイヴに初めて会うこともできた。思ってた以上に小柄な人だ。

続くは3rd『DOPES TO INFINITY』(1995年)だ。

オリジナル収録曲にカヴァーチューンこそないものの、今作の作風は基本、2ndのそれと同方向を向き、延長線上にあると言える。ただ、ジョー・カランドラが参加し、デイヴ、エドとトリプルギター編成になったことからギターサウンドがより肉厚になってることは特筆すべきポイントだ。加えてそれまでになかったインストチューンが“Ego, The Living Planet“Theme From “Masterburner””と2曲もある。今作は2ndの次に好きだ。

4th『POWERTRIP』は1998年6月発売だった。前2作はデイヴによるセルフプロデュースだったけど、今作はデイヴと、SLAYERやDEFTONESほかとの仕事で知られるマット・ハイドとの共同プロデュース作だ。

前作には主にギターで参加してたジョー・カランドラがベーシストに転身、3rdギターとして新たにフィリップ・カイヴァーノが招かれた。前2作で強く魅了された“ドープさ”は薄まり、それまで以上にデイヴのヴォーカルパートに重きが置かれてるように思える。
実はこの作品を持ってバンドは初来日した。1999年夏に富士急ハイランド・コニファーフォレストで3日間にわたり開催された野外フェス、Beautiful Monsters Tour(BMT)参戦と、その翌日の東京・渋谷CLUB QUATTROでのショウケースギグだ。BMTのステージにはビキニ姿の日本人女性ダンサーが登場し、客席は湧きに湧いた。ショウケースギグの方は場内満杯の大入り満員で、バンドのスリリングかつパワフルなパフォーマンスでかなり高いテンションだった。開演前、デイヴとフィリップ・カイヴァーノに対面取材した。
このときを最後にバンドはもう21年以上もの長い間、日本の地を踏んでない。それでもコンスタントに作品はリリースされていった。5th『GOD SAYS NO』(2001年)発売後にA & Mより離脱、足場をメタルインディーレーベルに移しながら今日まで活動は続いてる。残念なことに、日本盤化は現時点で『POWERTRIP』が最後となってる。長いこと来日から遠ざかってるけど、その理由のひとつに作品の日本盤化がないことも挙げられる。
6th『MONOLITHIC BABY!』(2004年)と、7th『4-WAY DIABLO』(2007年)はドイツのSPVよりリリースされたけど、現在Spotifyでは公開されてない。
ぜひまた、来日してほしいものだ。

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