RECONSIDERATION(再考論)第6回

【2021.01.04更新】

文・有島博志

メタルの枝分かれジャンルのひとつにスラッジメタルというのがある。かの“笑うアングラ大王”ことMELVINSが始祖的バンドのひとつとの説があるけど、わかりやすく言えばドゥームメタルと、USハードコアパンクの異種交配だ。この音楽の名や存在を知ったのは90年代前半のことだったと記憶するけど、正直言うと聴き込み、深く掘り下げ、広く情報収拾する、というところまではいかなかった。その理由はわからないけど、昨年暮れからスラッジメタルと呼ばれるバンドを改めて聴き直し、その独自性を再確認してみた。初めて聴いたのはCROWBARだった。2nd『CROWBAR』(1993年)がPANTERAのフィリップ・アンセルモのプロデュースということもあって日本盤リリースされたことがきっかけだった。

1991年~1992年頃を座標輔ゼロとして、デスメタルが地底奥深くより急速に頭角を現し、一気に広がったことがあった。CROWBARを第一聴時、「またひとつ新たなエクストリームメタルのスタイルが出てきた」ぐらいの印象だったけど、よくよく聴いてみると、ヘヴィネス、ビート、そしてそのテンポ、ヴォーカルスタイルにドロッとした触感や雰囲気などが、それまでのエクストリームメタルのそれらとは異なることに気づいた。
とにかく重い、ヘヴィだ。“No Quarter”はLED ZEPPELINのカヴァー。ほかにどういうバンドがいるのか、の情報を当時持ってなかったので、CROWBARの上記の作品の1枚前の1st『OBEDIENCE THRU SUFFERING』(1991年/日本盤未発売)を聴いた。で、特に超ウルトラヘヴィ、重厚な“Vacuum”にヤラれた。

次に出会ったのが、フィリップ・アンセルモがPANTERAと並行してやる別バンド、DOWNだった。CORROSION OF CONFORMITYのペッパー・キーナン(g,vo)のほかCROWBAR、GOATWHOREのメンバーが一堂に会す“US南部プチスーパーグループ”の1st『NOLA』だ。

大小のグルーヴを放ちつつ攻めてくるスタイルで、サザンロックを思わせるスワンピーな雰囲気を漂わせるのも印象的だ。日本人の知人がニューヨークのクラブでライヴを観てるのだけど、「スゴいヘヴィで音圧も強烈だった」と興奮気味に語ってたのを覚えてる。
その頃、『FOUNDATIONS FORUM ’91:A WEEKEND IN HELL』(日本盤未発売)なるVHSビデオを観た。1988年から1997年までの間に毎年ロサンゼルスで催された、いわゆる“メタル見本市”の模様がダイジェスト収録されてる。

バンド、業界入り乱れての大規模なイベントで、ピーク時はロサンゼルス国際空港近くの『Sheraton Hotel』を丸々借り上げての開催だった。自分も2度観にいったことがある。このVHSビデオは、その1991年のダイジェスト版。メタルのあり方や未来を討論するパネルディスカッションの場があり、フィリップがパネラーのひとりとして出てる。その登壇前後のタイミングで収録されたとおぼしきインタヴューで、スラッジメタルに言及してる。挙げられたバンドが、CROWBAR、WINTER、EYEHATEGODなど。早速、WINTERの『INTO DARKNESS』(1990年/日本盤未発売)を購入し、聴いた。

四方八方から“強いアングラ臭”がプンプンする。自分が思うにスラッジメタルというよりドゥームメタルに近く、徹底してスローだ。ズリッズリッと引きずるようなヘヴィネスで、とことん重心も低い。正直、自分はさほど響かなかった。バンドはニューヨーク産で1992年に一度解散、2010年より再始動したようだ。唯一のフルアルバム『INTO DARKNESS』は、後に『ETERNAL FROST EP』(1994年)がボーナスCDとしてついてリイシューされてる。
もうひとつのEYEHATEGOD。実は前から気になってたバンドではあった。CDショップに立ち寄り、いろいろもろもろチェックするたびにジャケに目が止まり、手にとってたバンドだった。試聴機には入れられてなかったので音はわからなかったけど、ジャケアートがかなりエグいので、勝手に「CARCASSみたいなバンド?」と思ってた。で、購入し、いざ聴いてみると全然違ってた(汗)。

Original 1990 cover
1992 reissue cover

『IN THE NAME OF SUFFERING』(1990年)が1stで、『TAKE AS NEEDED FOR PAIN』(1993年)が2nd。当時は日本盤化されてなかったように思う。Century Media Recordsからのリリースだ。それぞれかなり粗野なサウンドで、ハウリング音、フィードバック音がそのまま生かされてる。もう“ノイズの塊”がググッググッと、まるで戦車が迫ってくるかのごとく重圧感、圧倒感を放つ。
ロサンゼルスを出張で訪れた際、たまに情報収集でCentury Mediaのロサンゼルスオフィスにお邪魔してた。初めていったときスタッフに「Tシャツ気に入ったのあったら持っていきなよ」と言われ、お言葉に甘えて数枚いただいたことがあった。そのうちの1枚がEYEHATEGODだった。

Front
Back

けっこうよく着たTシャツで、経年もあり黄ばんでるし、右脇の下には穴が開いてる(笑)。
で、ライヴ凄そうとなり、ライヴDVD『LIVE』(2011年/日本盤未発売)も観た。

ちっちゃなクラブでの、形振り構わずのヘヴィネス、ノイズのブッ放しパフォーマンスは観応え十分だ。
EYEHATEGOD、今年新作を出すそうだ。楽しみだ!

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