Hiro Arishima/GrindHouse@Spotify

【2021.01.06更新】

Hiro Arishima/GrindHouse@Spotify

第6回 K/GUN DOG~Pay money To my Pain追悼!

昨年の12月30日はK/GUN DOG~Pay money To my Painの8回忌。彼を偲び、追悼するプレイリストだ。Pay money To my Painを中心に、GUN DOGも交えた内容とした。

photo by Yoshika Horita

昨年の12月30日、Kが突然この世を去ってから早くも8年の月日が流れた。忘れもしない、いや忘れようにも絶対に忘れることができない、あの日の夜のことを。Pay money To my Pain(P.T.P.)の所属レコード会社の担当氏より電話があり、「Kが亡くなりました…」と告げられた。まず口を突いたのは「ぇ?…」。少し前から彼が体調を崩してるとは聞いてたけど、まさかの訃報にまさに寝耳に水だった。
それからなにを話したのかは覚えてない。「教えてくれてありがとう」と言って電話を切った。仕事をしてた手が止まり、しばし呆然自失。すると涙が出てきて止まらず、彼との思い出が次から次へと浮かんでは頭のなかをグルグルと巡りだした。取材やライヴを通してだけじゃなく、偶然に、もあり、彼には何度も何度も会ってきた。
言うまでもなく、Kはすばらしいシンガーであり、孤高のフロントマンだった。そして優しい性格で、人懐っこく、まるでガラス細工のような華奢で繊細な心の持ち主でもあった。そんな彼は自分にとって愛くるしく、とても可愛いヤツだった。
Kに初めて会ったのは2003年10月。将来を嘱望されてたUK産トリオ編成のラウドロックバンド、InMeが再来日し、東京の今はなき新宿LIQUIDROOMでライヴをやったときのこと。彼はP.T.P.の前にGUN DOGをやってて、この夜サポートアクトとして出演した。終演後、会場のバックヤードで初めてバンドに会った。初観戦ライヴで得た印象を交えつつ話し、Kにこう切り出してみた。「ライヴの最中どこを見てる?」と。彼からは答えはなかった。居合わせたレコード会社の担当氏がフォローしてくれた。ライヴ観戦中、「彼はおそらくデリケートでナイーブな人なんだろうな」と思ったからだ。
それから少ししてGUN DOGは解散、P.T.P.が結成された。Kが渡米しつつ、GUN DOGと同じレコード会社と契約、ちっちゃな町、USカリフォルニア州ウィードのスタジオでP.T.P.名義のデビュー音源の制作に取りかかった。TOOLの初期2作品のほか、RED HOT CHILI PEPPERS、SYSTEM OF A DOWNほかとの仕事で知られるシルヴィア・メッシーがプロデューサーに迎えられた。この制作現場に、在ロサンゼルスのアメリカ人カメラマンとともにお邪魔した。このとき初めてKに対面取材した。笑顔を絶やさず、よく喋るなあ、というのが印象だった(笑)。話は自分自身のこと、P.T.P.のことから日本国内での活動のことや海外進出のことまで多岐にわたった。
それからは偶然も重なり、頻繁にKに出くわした。新宿LOFTでの『Drop of INK』デビューライヴ、ZEPP TOKYOでのDEFTONESとの共演ライヴ、札幌のNO MATTER LIVE、SHIBUYA‐AXでのヘッドラインライヴ、GrindHouse magazine表紙巻頭取材、GrindHouse fm及びtvへのゲスト出演、さらには偶然だったけど夏フェスの会場間移動バスの車中、ロサンゼルス国際空港でバッタリ…と挙げてたら枚挙にいとまがないくらいだ。体にたくさんのタトゥーを入れてることから一時、自らを“チビッ子ギャング”と呼ぶ、なんていうこともあった(笑)。
そうした経緯、経験から自分のなかに自ずと、Kの人間像が浮かんでくる。“強固な意思”と“幅広い視野”を持ち、“幅広い視野”を最大限に用いつつ“強固な意思”を抱き、前に進みながら徐々にしかし着実に現実のものとしていく、だ。そうしたアティテュードを貫き通そうとすればするほど、当然ナイーブさ、デリケートさは伴う。
今回Spotifyの選曲をするにあたり、GUN DOGとP.T.P.の全作品を初めて時系列的に通して数回聴き倒してみた。するとKがシンガーとして、P.T.Pがバンドとして確実に前に歩を進め、成長していってる様がよくわかる。Kの声が太くなり、歌唱法も豊かに。
バンドの演奏力もタイトに。楽曲には幅広さと奥深さが加わっていき、その表情がとても色合い豊かなものになってる。「P.T.Pはとても日本人バンドとは思えない。まるで欧米バンドのようだ」という声をよく耳にしたけど、自分も同感だ。
そうして聴いてると、改めてKという突出したシンガー、フロントマン、人間を失った、という想いにさいなまれる。Kよ、安らかに眠れ…。

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