Tシャツ博物館 第15回

【2020.08.19更新】

文・有島博志

プログレッシヴ・メタルコアバンド、BETWEEN THE BURIED AND ME(BTBAM)が好きだ。3rd『ALASKA』(2005年)で知り、それ以前の音源を聴きつつ、2006年のOzzfestの2ndステージでライヴが観られることになった。この年は御大オジー・オズボーンがなんとメインステージじゃなく、2ndステージのトリとして出演することが大変話題になった。BTBAMは確か午後の早めの時間帯にステージに立ったけど、それまでに聴いたことがないくらいPAスピーカーからの出音がヒドく、どの曲をやってるのかわからないくらいだ。期待が大きかっただけに完全に不完全燃焼だった。そして、4th『COLORS』(2007年)が発売され、バンドはUSツアーに出た。2008年1月31日発行のGrindHouse magazine Vol.46に、そのときのライヴリポートを掲載してるので、ここに再公開する。

Text by Hiro Arishima
Photo by Micah Smith

December 8, 2007
@Knitting Factory, West Hollywood, California


アメリカは南東部に位置するノースカロライナ州ラリー出身の5人組BETWEEN THE BURIED AND MEの通算4枚目のオリジナル作『COLORS』(日本盤未発売)の出来がすばらしい。それゆえ、どうしてもこの作品発売に伴うヘッドラインツアーが観たかった。幸運なことにロサンゼルス滞在中にハリウッドブールヴァード沿いにあるクラブ、ニッティングファクトリーで観ることができた。
ただいま支持率急上昇中のBTBAMゆえ、この夜は完全ソールドアウトだった。さして大きなハコではないけど、400人ほどの観客で場内はゴッタ返してた。一番手でMetal Blade Records所属のプログレッシヴでテクニカルなメタルバンド、BEHOLD… THE ARCTOPUSに続き、US東部ペンシルバニア州ランカスター出身の5人組、AUGUST BURNS REDが出番を迎えた。通算2枚目の新フル作『MESSENGERS』(日本盤未発売)を昨夏発売したばかりの、Solid State Records所属の中堅クラスのバンドだ。メタルとハードコアと北欧メロデス間を自由往来し、リフとビートに鋭い切れを持つそのサウンドに、ここ日本にも熱心なファンがいるけど、彼らのライヴは想像以上にカッコよく、途中何度も釘付けにされ、引き込まれた。ハードコアに大きく傾き、寄った流儀で攻めに攻め、押して押しまくるパフォーマンスはフロアに何度もモッシュピットを作り出すほどの寒気力、突き上げ感、衝動性に満ちたものだった。ジェイク・ルアーズ(vo)のステージさばきや、観客とのやり取りもツボを得てて、曲によっては場内の至るところから大合唱が上がったほどだった。彼ら、今後間違いなく、さらに頭角を現していく。余談だけど、(当時の)彼らのマネージャーはKILLSWITCH ENGAGEのハワード・ジョーンズ(vo)だ。
セット転換を経た夜10時半過ぎ。場内が暗転、大きな歓声と熱いエネルギーが吹き上げられるなか5人のメンバーがステージに登場。所定の位置に就くや、『COLORS』収録曲でいきなり11分もある大作“Sun Of Nothing”でブルータルかつプログレッシヴロック風に駆った。
極めて個人的なことだけど、欲を言えば、ド頭を静かで美しいピアノの調べに導かれる“Foam Born (a) The Backtrack”でスタートし、“Foam Born (b) The Decade Of Statues”に雪崩れ込んでいくという『COLORS』の冒頭の流れで始まってほしかったけど、それは勝手で贅沢な希望というもの。実は以前彼らのライヴを体験してるけど、そのときの印象と、今回のそれとはまったく違った。演奏自体にまず整合感が加わり、安定感もバッチリで、かなり難易度の高い技をビッシンバッシン決め、きかせどころ、見せ場を頻繁に作り出してた。活動歴7年を誇り、その間に10回近く人事異動をしてるなどメンバーの出入りが激しいバンドだけど、おそらく今がこれまでで一番演奏集団として充実したいい時期にあるんだろう。次に披露されたのはやはり『COLORS』収録曲で、今度は13分強もある長尺曲“Ants Of The Sky”ときた。だけど中だるみすることなく、高いテンション、熱い臨場感が常々キープされ、ブルータルでハードコアなパートになればモッシュピットができ、クラウドサーファーも続出。クリーンパートに入っていけば、それまでのピットやクラウドサーフィンはピタリと止み、大合唱が場内をつんざくという、豊かでメリとハリがハッキリ効いた抑揚感に支配された、彼らならではの音世界が最後まで築かれてた。カヴァー集『THE ANATOMY OF』(2006年/日本盤未発売)でもやってるSEPULTURAの“Territory”もプレイされた。
今、BTBAMはかなりとんでもないことになってる。今後より上昇し、さらにビッグになっていくことは間違いない。彼らのことを知らないという人は、ぜひ音源をチェックしてほしい。(以下、BTBAMのセットリスト)

01.Sun Of Nothing
02.Ants Of The Sky
03.Prequel To The Sequel
04.Viridian
05.White Walls
06.Mordecai
07.Territory ※cover of SEPULTURA
08.All Bodies

ここまでがGrindHouse magazine Vol.46掲載のライヴリポートのアーカイブ公開なのだけど、あの夜ライヴが終わった後に場内をウロウロしてたらメンバーが出てきたので、トミー・ロジャース(vo,key)と、ブレイク・リチャードソン(ds)に挨拶、自己紹介し、しばし立ち話を。2人とも気さくな人たちだった。そして、下の『COLORS』Tシャツを購入した。なぜクラゲが描かれてるのか、今なお不明だ(笑)。

で、そのときのUS出張から戻った後もライヴの興奮覚め止まぬだったので、珍しく海外のマーチャンサイトで『ALASKA』Tシャツを購入、取り寄せた。それが、下のだ。作品タイトルが『ALASKA』なのに、フロントに山小屋のようなものが描かれてるのかは、今も謎だ(笑)。

『COLORS』、そして続く5th『THE GREAT MISDIRECT』(2009年/日本盤未発売)を今なお時折聴く。BTBAMのキャリアにおいて、この頃が一番好きだ。

ハードコアならではの強靭さ、耐久性。メタル特有の重量感、肉厚性。そしてプログレッシヴロックだからこそ出せる美しさ、静けさを内包した豊かな情景描写などが縦横無尽に混ざり合い、重なり合いながら曲がいろいろな表情を見せていく様は圧巻ですらある。整合感も見事だ。アートだ。実にすばらしい。ちなみに、『THE GREAT MISDIRECT』のエンディングを飾る“Swim To The Moon”は18分近い超大作曲だ。
この後、BTBAMは2度来日してる。

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