Tシャツ博物館 第23回

【2020.10.28更新】

文・有島博志

出会ってから早30年ぐらいにもなる。だけど、今なおPRIMUSの音楽をどう一言で形容したらいいのか迷うし、よくわかってない(苦笑)。まあなにも一言で言い表す必要もないのかな、とも思うのだけど、それじゃあ仕事として不親切だし、彼らの音楽を初めて聴くリスナーには伝わりにくい。ミクスチャーロックと言やあ確かにミクスチャーロックだけど、その音楽はそう呼ぶ範疇には収まりきらないし、またオルタナティヴロックじゃああまりに抽象的だ。ずいぶん前にバンドの長年のマネージャー氏に「彼らの音楽を一言でジャンル分けすると?」と訊いたところ「こっちが知りたいよ」と言われたほどだ(笑)。そんな実にわかりにくく、ある意味難解な音楽をやる彼らなのだけど、私的フェイバリットバンドのTOP 10には間違いなく入る。たぶんあと数枚は実家の押し入れのなかか、倉庫にあるとは思うけど、今手元にある私的Tシャツコレクションを3枚紹介する。
まずは、1993年版の音楽的異種格闘技パッケージツアー、LollapaloozaのTシャツ。US東部ロードアイランド州プロビデンス公演を観たときに購入したものだ。

1992年版も観たし、そのときの出演陣の顔ぶれも強力だったけど、1993年版のそれも負けず劣らずのスゴさだった。当初大トリにはブイブイ言わせてた真っ最中のALICE IN  CHAINS(AIC)がアナウンスされてた。だけど程なくして「トリの出番だと終演時間が遅くなり、多くの観客たちが我々を観ずして帰路につく。多くの人たちに我々のライヴを観てほしいんだ」との声明を出し、AIC自らトリの座を辞したという前代未聞のハプニングが起きた。そこで、もともとはコヘッドラインアクトとして出演が決まってたPRIMUSが急遽トリへと昇格した。
このときのPRIMUSのライヴは、自分にとって初来日公演に続く2度目だった。彼らのライヴのホントの凄まじさ、そして本場でのヴァイブを少しでも直に肌で味わいたいとクラウドのなかに入って観てた。だけど、途中何度もブッ倒されそうになるわ、弾き飛ばされそうにもなるわで、「このままクラウドのなかにい続けたら、オレ無事に会場から出れん!」となり、クラウドから出ての観戦に切り替えた、という経験をした(笑)。彼らのライヴ、マジでスゴかった…。その勢いでTシャツも購入してしまった。ちょうど3rd『PORK SODA』が発売された直後の時期。USチャート初登場7位をマークしたバンド最大級のヒット作だ。

1993年版の布陣は今思い返してもあまりに豪華だった。当時はグランジ/オルタナティヴロック最盛期只中で、それまで地下で蠢いてたバンドたちが次から次へと頭角を現してはシーンを縦へ横へと激しく揺り動かしてた。もっともロックが活気づいてた頃だ。このとき自分的にAICは3度目、TOOLは2度目の観戦、RAGE AGAINST THE MACHINE、FRONT 242などは初見。それぞれにそれぞれの勢い、カッコよさが漲り、2ndステージにもBABES IN TOYLAND、SEBADOHなどいくつか観たいバンドが出てたけど、メインステージ出演陣があまりに魅力的すぎてその場を離れることができなかったほどだ。
当時は、まだGrindHouse magazineは創刊前だった。よって他の大音楽専門誌数誌にこのときのライヴリポを企画として持ちかけたはいいけど、どこも興味を示さなかった。老舗『MUSIC MAGAZINE』だけがノッてくれて、20pに及ぶ大特集を組んでいただけた。これは心底嬉しかったし、業界内で大変話題になった(笑)。いい思い出だ。
知っての通り、PRIMUSは2000年以降、活動休止/再始動を繰り返してる。活動休止の間に御大レス・クレイプール(vo, b)はさまざまな名義でのソロ活動に重きを置いてた。そんなときにこういうTシャツを発見し、思わず買ってしまった(笑)。PRIMUSの自主レーベル、Prawn Songの公式サイトを介してだ。バラク・オバマ政権が誕生する前の、大統領選挙たけなわの頃だったと記憶する。いかにもアメリカンだし、レスらしいジョークのデザインだ(笑)。

この記事を執筆するにあたり、PRIMUSの作品を立て続けに何作か改めて聴いた。やっぱイイし、とことん風変わりだ。まだ未聴という人にはぜひ一度触れてほしい。2000年に最初の活動休止をする前までの6作品がおススメだ。

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