Tシャツ博物館 第7回

【2020.06.24更新】

文・有島博志

今回は内容が盛りだくさんだ。GREEN DAYが8th『21st CENTURY BREAKDOWN』(2009年)発売に合わせいろいろなことをやった。まずは発売に合わせ、GrindHouseとのコラボTを作製した。そして、2009年6月6日に渋谷DESEOで催したDJクラブイベント、GrindHouse nightで先着順で無料配布した。販売用ではなく、あくまでも作品のプロモーションの一環として、ということでコラボTシャツ作製の許諾はすぐに下りた。GrindHouseのロゴを袖のところに入れただけのシンプルなものだけど大変好評で、イベントも大盛況だった。

そして、同時期2009年5月31日発行のGrindHouse magazine Vol.54にて弊誌GREEN DAY初の表紙・巻頭特集も実施した。その号に掲載したインタヴュー記事をアーカイブ公開する。

取材・文/有島博志 Hiro Arishima
通訳・鈴木美穂 Miho Suzuki


GREEN DAYはマジで締切ギリギリのギリギリまで新作『21st CENTURY BREAKDOWN』(邦題『21世紀のブレイクダウン』)の制作に追われていた。当初、3月上旬にロサンゼルスで予定されてた取材が、まだ作業を終えてないからという理由で幾度も変更となり、ようやく実現したのは(2009年)4月16日、彼らのホームタウン、バークレーの程近くオークランドでだった。幸運にも、取材前日の4月15日当日にアナウンスされたクラブ、The Uptownでのゲリラライヴを観戦することができた(この時期、彼らはこういうライヴを何回も演ってた)。その翌日、新作が完成を見たスタジオ808で、ビリー・ジョー・アームストロング(vo,g)、マイク・ダーント(b,vo)、トレ・クール(ds)に対面インタヴューした。

――昨晩のゲリラライヴ、まさに観応え十分だったよ。
トレ「あそこにいたんだ? それはよかった!!」
――セットが2時間10分を超えたのにはビックリしたけど(笑)。
ビリー「ああ、だけどそれ短い方だよ」
――ぇっ!? GREEN DAYをあんなちっちゃなクラブで観られるなんてことはもう二度とないだろうからラッキーだし、最高だったよ。
トレ「日本でも小さなクラブでライヴを演りたいんだ(※5月28日、東京・赤坂BLITZで演ったハズ)」
――最近ちょくちょくゲリラライヴを演ってるね。しかも2部構成で、1部で新作収録曲をほぼ全曲演っちゃうし。ウォームアップも兼ねてるの?
ビリー「過去3年半、GREEN DAYとしてほとんどライヴを演ってなかったから、早く演りたくてたまらなかった。新作完成の最終作業であるマスタリングを終えてから5回リハーサルをし、“とにかくライヴが演りたい! じゃあ演っちゃおうか!!”って。会場の規模なんてどうでもよかった。で、まず地元バークレーのクラブ、Independentで演り、サンフランシスコでもプレイし、一昨日は、The Uptownの斜め向かいのFox Theaterで演ったんだ。どのライヴも最高だったよ」
――新作収録曲をほぼすべて演ったじゃない。だけど新作はまだ発売前ゆえ、観客の誰ひとりとして楽曲を知らないわけで。にもかかわらず、あれだけ長く演る場合、観客のノリを維持し、観客の意識を掴み続けるのって、さしものGREEN DAYでも至難の業だよね。
ビリー「バンドで初めてのライヴを演ったときに似てる。誰も曲を知らないから、場内に充満するエネルギーがいつもとはかなり違った。実際にはそうじゃないんだけど、たくさんの人たちがフロアに座って観たり聴いたりしてる感覚に近い。じっくり新曲を聴いてるからクレイジーに騒ぐ人はいないけど、それはそれで自分たちにとってチャレンジになるからいいんだ。何事も、いかなる環境でも挑戦し続けることが大事なんだよ」
――アンコールっていうか第2部では〝Welcome To Paradise ″〝American Idiot″といったヒット曲が大半で、それらにBUZZCOCKSとかのカヴァー曲も混ぜてたよね。
ビリー「うん、だけど曲は毎回変えてるんだ」
トレ「昨晩のライヴでなにが最高だったかって言うと、コアな観客たちが最前列で新曲を早くも歌ってくれてたってこと。ゲリラライヴを何度か観るうちに覚え、家でYouTubeにアップされた隠し撮り映像なんかを観つつ予習してきたみたいなんだ」
――ギリギリまで作業してた新作がようやく完成し、あとは発売を待つばかりだけど、今の気分は?
ビリー「まだ制作の最中みたいな気分でね。なにしろものスゴく大きなプロジェクトだったから。収録時間の長い作品だし、その分、制作プロセスも長かった。だけどオレたち全員、その出来にとても満足してるよ。ひいき目で見ても(笑)、これまでで最高の作品を作れたっていう実感があるんだ」
トレ「新作が完成し、パートや曲ごとではなく、作品全体を聴けるようになり、スゴく楽しんでる。車や家とか、どこでも聴いてるもの。パンツ一丁の姿でもね(笑)。完成品を手にし、自分のここ数年間がここに詰まってるかと思うと、気分もひとしおさ。スゴくいい作品が作れたし、このバンドを改めて心から誇りに思ってるよ」
マイク「今のオレたちにとっちゃ、こうして何度かライヴを演るっていうことは最高のことでさ。オレたちの頭をスタジオから外に出すことができたから。ビリーが言ったように、エラく長い制作プロセスだったから新曲の何曲かは、それこそ何度も繰り返し聴いた。だからこそ、観客からエネルギーをもらう必要があったんだ。それができてうれしいよ」
――この質問は今回間違いなくたくさんされてると思うんだ。前作『AMERICAN IDIOT』(2004年)もビッグな作品だったと同時に、超ウルトラ大ヒット作にもなったじゃない。あそこまでの作品を作った後だけに、今回は曲作りの段階から重圧感があったでしょ。
ビリー「うん、確かにあったよ。だけどその重圧感を、オレたちがさらによくなるための挑戦として受け止めた。前作のおかげで、今回オレたちの音楽の幅をさらに広げ、かつて行ったことのないようなところに行く挑戦をする機会を持てたんだ。歌詞だって前にも増して大胆に、かつよりポリティカルになってるし、いろんな意味でより危険にもなってる。だから重圧感と言っても、自分たちを過去最高へと押し進めるための機会を与えられたような感じだったよ」
――今回は作業を一時中断してまた再開したり、スタジオを出たり入ったりを繰り返してたよね。それは、やってることが一時的にせよ見えにくくなったり、煮詰まったりしたから?
ビリー「制作プロセス中にどうしたらいいかわからなくなっちゃうときってあるもので、集中できなくなったり、楽しめなくなったりしたときは、あえてその場からちょっと離れ、放っておくことにしたんだ。そんなとき、FOXBORO HOTTUBSで『STOP DROP AND ROLL』(2008年)を出し、ツアーもやり、ビールを一杯ひっかけたりして発散し、とにかくなにも考えずに楽しい時間を過ごした。それでリフレッシュし、再び新作制作に戻れた。オレたちは今回自らハードルを上げ、オレたちのキャリア最高の作品を作りたいって思ってたんだ。だけどそれを形にするためには根気がいる。オレたちは地球上で一番落ち着きのない人間だからさ、辛抱強く続けるのってスゴく難しいんだ。だから辛抱強く作るっていうのが、オレたちがこれまでに直面したなかで最大のチャレンジたったと思う」
マイク「毎朝8時にスタジオにくるとかさ」
ビリー「急いで来たのに待たされたとかね(笑)」
――昨晩The UptownでMYSTIC KNIGHTS OF THE COBRAのレイチェルって女の子に声をかけられ、立ち話をしたんだけど、FOXBORO HOTTUBSと一緒にツアーしたって言ってた。
ビリー「おお!! レディーコブラに(笑)。そう、ツアーしたけど、彼らはクレイジーなバンドだし、彼女はとても危険だよ」
トレ「で、デートすんの? 断っておくけど、マジで危険だから(笑)」
――そんなのないって(笑)。
トレ「GREEN DAYのおかげでヤれちゃうよ(笑)」
――だからそんなのはないってば(笑)。話を戻すけど、FOXBORO HOTTUBSをやりリフレッシュできたわけだけど、それ以降制作はスムーズに進んだの?
ビリー「イヤ、あのときはまだコスタメサで曲を作ってて、デモとかも録ってる最中だった。その作業は順調だったよ。ロサンゼルスのオーシャンウェイ・スタジオなどで実際の制作を始めたのはその後のことで、プロデューサーのブッチ・ウィグに初めて会ったのもその頃だよ」
――なぜ今回、長らく一緒にやってきたロブ・キャヴァロとはやらずに、ブッチと組んだの?
マイク「彼がスゴくイケメンだから(笑)」
ビリー「単純にイイ人でね、それにいろいろなタイプの作品を手がけることができる人だし、パンクロックのバックグラウンドも持ってるのが大きかったね。あと、オレたちの新作を手がけることについておじけづかなかったのは彼ぐらいだった。それに制作プロセスに落ち着きや上品な雰囲気も持ち込んでくれた。これまでのオレたちはそういうものに触れたことがなかったから」
――今回もコンセプト作品だね。前作はデヴィッド・ボウイの『THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS』(1972年)や、ミュージカル『THE ROCKY HORROR SHOW』(1973年)にインスパイアされたって言ってたけど、今回はなににインスパイアされたの?
ビリー「あらゆるところから来てる。THE WHOの『WHO’S NEXT(1971年)とか、70’sブリティッシュ・
インベイジョン音楽の多くにインスパイアされた。それで、よりシアトリカルな内容になってる。と同時に、なにかに影響されるっていうところからは離れ、多くの面で自分自身の音楽にインスパイアされるようなところまで進もうとした。それってスゴく難しいことだったよ。だから今回初めて、必ずしもヒーローとかがいるわけじゃない作品を作った気がする。オレたち自身の経験や人生を基にして作った作品だから」
――お世辞でもなんでもなく、新作はマジでスゴいね。前作もホントにすばらしい作品だったけど、それを超越してる。内容が深いし。当たり前ながらメロディも曲もいいから、聴いてる最中、絶対に気持ちがほかに行かないんだよね。
ビリー「どうもありがとう。新作は最初から最後まで通して聴いてもらってもいいけど、〝Murder City″とか1曲だけ取り出して聴きたければ、それだけ聴いてもいいと思うんだ。オレたちはどんなことも当たり前だと思わずに努力し続けてる。それがこのバンドの強みだから。可能な限りハードに自分たちを駆り立て、前に進もうとしてるんだ」
――それってまさに「言うが易し、やるが難し」じゃない。だけどそれを実践し、形にしてしまうところが、今言ったようにGREEN DAYというバンドの強さだよね。
ビリー「そうだね。だけど前に進もうとすると、自分の弱い部分もたくさんさらけ出さなきゃいけない。そういうとき、スゴく無防備になってるのを感じるんだ。オレたちは3コードにワンビートの曲を書くバンドとして知られてるわけだし、その過去を認識した上でこれまでで最高に野心的になり、新しいビートやリズムを取り入れて前に進もうとすると、スゴく自分自身というものを意識せざるを得なくなるんだ」
――今回ヴォーカル面でもさらなる進化、発展が顕著に見られるね。
ビリー「うん、それぞれの曲に合うように歌った結果なんだ。今回結構ピアノで曲を作り、〝Last Night On Earth″や〝Restless Heart Syndrome″とか、これらの曲じゃファルセットで歌う部分が出てくるんだけど、これこそ無防備な行為でさ。まあ、いろいろ変えてみようとしたんだよね」
――前作にはセイント・ジミーなどのキャラクターが出てきたじゃない。今回はグロリアとクリスチャンが登場するけど、前作と新作の主人公は違うキャラなの?
ビリー「うん、類似点はあるけど、グロリアが主人公で、ポジティヴなキャラでね。パンクロックみたいに、自分の信念をしっかり持ち、アンダーグラウンドのライフスタイルに真実を見出そうとしている人間。一方クリスチャンは自滅的なところがあるキャラで、自分自身のなかに宿る悪魔にやられちゃってる。このふたつの面を抱えて葛藤してる人が世のなかにたくさんいると思うんだ。自滅とインスピレーションの狭間でね。このふたりのキャラでそれを描こうとしたんだ」
――さらに新作では「国のリーダーに大きな期待を持ち過ぎることなく、国民一人ひとりが進んで政治にかかわろう」とも言ってるよね。それって昔、故ジョン・F・ケネディの演説にあった一節「国民が国になにかをしてもらうことを待つのではなく、国民が国に対してなにかをしよう、国をよくしていこう」というのに近いね。
ビリー「そうだと思う。〝Know Your Enemy″はみんなに自分たちで力をつけようって歌ってて、THE ROLLING STONESの〝Street Fighting Man″やTHE BEATLESの〝Revolution″みたいな感じ。ソングライターとしては、あれぐらいいい曲が書けたらって熱望してるんだけど。いつかそこまで行けたらいいなって思う。いずれにせよ、とにかく自分自身の力でやっていこうよってことなのさ」
――これまでの長い積み重ねや前作で、バンドはとてつもなくビッグな存在になったけど、新作を聴き、そして昨晩のライヴを観て、改めて思ったんだ。GREEN DAYってやっぱりパンクロック・バンドだなって。
ビリー「うん、そのとおりさ」
トレ「間違いないね」
マイク「だってそれがオレたちが出てきた場所だし、オレたちの血に流れてるもので、それがオレたちだからね」
ビリー「まさにグラウンドゼロさ」
トレ「今回のライヴを、特にオレたちのホームタウンの近く、オークランドの小さなクラブで観てもらえてよかったよ。いつもいろんなバンドがあそこで演ってるけど、そこにいきなりGREEN DAYが登場して引っ掻き回したっていう」
ビリー「しかもMYSTIC KNIGHTS OF THE COBRAのレイチェルとも話ができたしね(笑)」
――またそのネタかい(笑)。5月に久しぶりの来日だね。
マイク「前作を頭っからケツまで演るよ!っていうのは冗談で、とにかく楽しみ。また日本のファンとつながりたい。それに新作が出て、みんなが聴いたあとに演るライヴは、今よりもっとよくなっているだろうからワクワクしてるよ」
トレ「日本のファンはホントにエネルギー全開だから、オレたちもパワーをもらえるし、ステージに立った途端に天井を貫いて飛んでいくよ!」

続いて、先日プレゼント企画にも出した、JPレコード会社作製のステッカーだ。

締めくくりは、『21st CENTURY BREAKDOWN』関連ではないのだけど、オマケとして公開する。JPレコード会社作製の6th『WARNING』(2000年)のときの宣材だ。よく覚えてないのだけど、作品タイトルの意味と、なにかを引っかけてこの防水ライトなんだと思う(笑)。

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