【2021.01.11】
文・有島博志
1980年代前半以降、日本の、特に東京のライヴハウスシーンには、形こそ視認できなかったものの、熱く、ゴツゴツしたものが確かに蠢き、増殖しようとしてた。あくまでも体感的な感覚で、まだ今の仕事に就く前のことだったこともあり、その感覚がなにを意味するのかわからなかった。誰かに聞いても、誰もそれがなにかを教えてくれなかった。移転する前の新宿LOFT、新宿ACB、渋谷屋根裏(閉店)を振り出しに神楽坂EXPLOSION(閉店)などと顔を出すライヴハウスも増え、より足繁く通うようになると、その体感的な感覚がなにかが次第にわかるようになってきた。その最中にANTHEMに出会い、東京の十二単、VEIL、UNITED、名古屋のSNIPERらを知り、さらにはDOOM、JURASSIC JADE、X(現X-JAPAN)などのライヴも観て、バンドのメンバーとも会場で立ち話をするようになった。で、ようやくその体感的な感覚がなにかがわかり始めた。そう、その熱く、ゴツゴツしたものはバンドが放ってた強いエネルギーだったのだ。バンドとして認知されたい、上に上がりたい、活動範囲を広げたい、といったような強く、深い想いがエネルギーに転化されて放たれてたのだ。メタル専門レーベル、Metal Blade Recordsがかつてシリーズ化してリリースし、LAメタル、スラッシュメタル隆盛に大きく貢献した未契約バンドを集めたコンピ『METAL MASSACRE』に参加してたバンドたちーー。
METALLICA、SLAYER、RATTらの収録音源から似たような体感を覚えたのを思い出した。ヘタするとデモテープ音源を入れ、そのままレコード(CD)化する、という当時の自分には頭を傾げるような制作方針だったものの、このコンピ群がスラッシュメタル、LAメタルといった“うねり”を突き動かしたのは間違いない事実だ。
今から33年も前の1987年に日本で1枚のコンピが出た。『SKULL THRASH ZONE VOLUME 1』が、それだ。
CD、アナログLPレコードともに絶版で、Spotifyにも上がってない。
収録参加バンドは計6組。
DOOM、SHELL SHOCK、X、JURASSIC JADE、GROUND ZERO、ROSE ROSEだ。作品タイトルからもわかるように、欧米で大きなムーヴメント化してたスラッシュメタルへの日本からの回答と言えた作風だった。それぞれ個性が立ち、いい意味でアクもクセも強いバンドばかりだ。作品発売からずいぶん経つけど、DOOM、SHELL SHOCK、X(現X-JAPAN)、JURASSIC JADE、ROSE ROSEは現在も活動継続中だ。このコンピをコンパイルした方を存じ上げないものの、決して末長く活動していくだろう、なる観点ではバンドを選出してないだろうけど、そうだとしてもスゴいと思う。DOOMとROSE ROSEは3年前に、弊誌GrindHouse magazine Vol.101に記事掲載もしてる。
残念ながらこのコンピのVOLUME 2は発売されることはなかったけど、この作品は間違いなくジャパニーズ・スラッシュメタルの熱き咆哮だった。
有限会社グラインドハウス Copyright (C) GrindHouse Ltd. All Rights Reserved.