MUST LISTEN!/VERY RARE STUFF

【2021.02.22更新】

文・有島博志

1990年代中盤から2000年代前半にかけて、何種類ものBLACK SABBATHトリビュートアルバムが発売された。そのうちの1枚が、1994年秋に発売の『NATIVITY IN BLACK: A TRIBUTE TO BLACK SABBATH』だった。

発売からすでに四半世紀以上もの長い歳月が経ってるものの、数多ある同系作品のなかで、自分としては今なおこの作品がベストだと思ってる。そしてこの作品には第2弾があり、2000年に『NATIVITY IN BLACK Ⅱ: A TRIBUTE TO BLACK SABBATH』のタイトルで発売された。オジー・オズボーンのワイフであり、敏腕マネージャーとしてあまりにも有名なシャロン・オズボーンの主導・先導で、シャロンが立ち上げたレーベル、DIVINE RECORDINGSよりVirgin Recordsの流通でワールドワイドリリースされた。第1弾の参加陣も豪華だったけど、第2弾のそれも負けず劣らずに豪華だ。ただ、理由は不明だけど、Spotifyでは未公開。YouTubeで試聴可だ。

NATIVITY IN BLACK Ⅱ:A TRIBUTE TO BLACK SABBATH Playlist

冒頭を飾るのは、1st『GODSMACK』(1998年)を本国アメリカで400万枚以上売るなど、まさに人気絶頂期にあった4人組によるカヴァー。原曲と同じく冒頭に“咳払い”を入れるなど、GODSMACKは芸が細かい(笑)。続くは、当時“モダンヘヴィネスの雄”と言わしめたUS西海岸カリフォルニア州サンフランシスコ産4人組、MACHINE HEADは、実に彼ららしいアレンジで。後半のロブ・フリン(vo,g)のスクリームがめちゃカッコいい!次は昨年再結成した“evil disco”こと4人組、STATIC-X。これまたいかにもなアレンジで聴かせる。そして、MEGADEATH。原曲で聴けるオジーの声色と、デイヴ・ムステイン(vo,g)のそれがバッチリ合致してて、秀逸な調理方法に。そして、SYSTEM OF A DOWN。ヴォーカルの歌い回し、細かいギターリフの刻みなどから一聴して彼らがやってるカヴァーだとわかる。
『REINVENTING THE STEEL』(邦題『激鉄』/2000年)とともに解散前に出した最終音源のひとつ。かつて“Planet Caravan”をカヴァーした経緯もあり、SABBATHのカヴァーはお手のもの。“Planet Caravan”といい、“Electric Funeral”といい、わりとカルト的な雰囲気を漂わす曲を選ぶ傾向がある。さすがPANTERAだ。
超革新的で、かつとても風変わりなバンド、PRIMUSと、“メタルの権化”こと御大オジーとのコラボが興味深い。レス・クレイプール(vo,b)“オハコ”なバッキバキ言わすスラップベースは聴けないけど、ベースプレイは相当前に出てる。続く“スラッシュメタルの帝王”、SLAYER。原曲の性格を生かしてるからだろう、彼らにしては珍しく控えめで、トム・アラヤ(vo,b)の歌唱法もかつて聴けなかったものだ。ギターはケリー・キングとジェフ・ハンネマン。原曲をリスペクトしつつも、自分たちらしさも強く主張するSOULFLYの次は、ミクスチャーロックのHED(PE)。聴く前はアレンジがもっとミクスチャーミクスチャーしてるのかと思いきや、そんなことはなく、原曲をリスペクトし、わりと静かめに調理してる。それでも随所に彼ららしさが顔を覗かせ、ジャレド・ゴメスの歌唱法はいかにも彼らしい。MONSTER MAGNETがその音楽性からSABBATHの音楽的影響下に、それも直系下にあることは疑いの余地は皆無だ。原曲の形態を徹底して尊重しつつも、所々に彼らっぽさが顔を出す。
オリジナル収録曲の最後を締め括るのは、ジャマイカ系アメリカ人の大御所ラッパー、バスタ・ライムス。このカヴァーは確か、このトリビュート作の前に自身の作品に収録してたはず。リリックの鋭い切り込ませ方はさすが。サビパートはオジーが歌ってる。
日本盤CDには、次にヘヴィロックバンド、SLAVES ON DOPEによる“War Pigs”のカヴァーがボーナストラックとして追加収録されてるのだけど、こちらはあげられてない。
このトリビュート作発売タイミングで、ハリウッドでシャロン・オズボーンに対面取材をした。それまでにも何回かOzzfestの現場でも会ってたけど、いつもナイスな応対をしていただいた。取材で2作のSABBATHのトリビュート作について、こう言い切ったのを今でも覚えてる。
「対象がオジーであり、SABBATHであるからこそ、ここまでの顔ぶれが参加してくれたし、大規模な展開もできるのよ」
この発言を聞いたとき、心のなかでボソッと「仰せの通りでございます」とつぶやいたことは言うまでもない…。

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