MUST LISTEN!/VERY RARE STUFF

【2021.03.22更新】

文・有島博志

唐突だけど、かつてサザンロックにハマり、かなり追っかけてたことがある。サザンロックとは、簡単に言えばブルース、カントリー、R&Bなどから強く影響されたアメリカ南部で生まれ、育まれた土臭いロックのことを指す。大学在学中に知り、この仕事に就いてからもしばらくこまめにチェックし、LPレコードを買い漁ってた。最初に聴いたのは、AMラジオの洋楽番組で流れ、知ったLYNYRD SKYNYRD、THE ALLMAN BROTHERS BANDだった。
その頃、洋楽誌『MUSIC LIFE』、『音楽専科』でサザンロックが紹介されるのはせいぜいレコードレヴューぐらい。それでは情報が足らず、飽き足らずで渋谷区宇田川町にあった輸入レコード店のスタッフと懇意になり、いろいろ教えてもらってた。で、38 SPECIAL、MOLLY HATCHET、BLACK OAK ARKANSAS、JOHNNY VAN ZANT BAND、ROSSINGTON-COLLINS BANDなどを聴いていった。ちなみに、その懇意になった輸入レコード店のスタッフは、後に自分がこの仕事に就くことに背中を押してくれたひとりだった。
十把一絡げにサザンロックと言っても、けっこう音楽的に細分化されてる。そのひとつにハードロック(NWOBHM前は、ヘヴィメタルという言葉が音楽的造語として用いられることは非常に稀だった)的というか寄りというかのサウンドアプローチを信条とするバンドがいくつかいた。THE OUTLAWS、POINT BLANK、DOC HOLLIDAYらがそうで、なかでもBLACKFOOTは相当ハードロックに特化してた。
そうした“サザンロック熱”が自分のなかで落ち着いてた1989年のある日、JPレコード会社よりRAGING SLABの通算2枚目で、メジャーデビュー作となった『RAGING SLAB』のCDが送られてきた。初めて聞くバンド名で、ジャケ(現在流通してるのはリイシュー盤でジャケが異なる)に登場したメンバー4人(うちひとりは女性)のうち3人がカウボーイハットを被ってる。いかにもUS南部っぽいなと思った。

で、早速CDを試聴してみると、まさに自分好みで、思わずニヤリとさせられたものだ(笑)。サザンロックとハードロックのド真ん中をいくようなサウンドアプローチ。

リーダー格のグレゴリー・ストルツェンプカ(vo,g)の力強い歌声、女性のエリス・ステインマンのスライドプレイを絡ませた変わった響きを放つギターリフ、ホコリっぽくて水を撒きたくなるような南部臭にツボを突かれた。実はバンドは南部出身ではなく、ニューヨーク出身というのにも興味を持った。『RAGING SLAB』で製作された“Don’t Dog Me”のPVには舞いまくる土煙、異様にデカくてブ厚いタイヤを履かせたダンプトラック…と、もろサザンロックしてるのだけど。

Don’t Dog Me

その後バンドはレーベルをリック・ルービン主宰のDef American Recordings(現American Recordings)に移籍し、3rdアルバム『DYNAMITE MONSTER BOOGIE CONCERT』(1993年)、そして4thアルバム『SING MONKEY,SING!』(1996年)を発売していく。前者は日本盤化されたと記憶する。

3rdも4thも音楽的方向性は、基本2ndとあまり変わらず、同一と言っていい。特にこの3作品が好きだったので、当時電話でもいいので取材したかった。だけど、まだGrindHouse magazineは創刊前だったし、洋楽ロック誌いくつかに取材記事掲載の話を持ちかけてみたものの、どこも興味を示さず、取材するのを断念せざるを得なかった。まあサザンロックで、しかもニューアクトじゃそれも致し方なかったのかもしれないけど…。その後もバンドはメンバーチェンジを繰り返しながら、作品を重ねていく。
余談だけど、僭越ながら言わせてもらうと、リック・ルービンの音楽的好みと、自分のそれはけっこう近いように思える。Def Jam RecordingsやDef American Recordings(現American Recordings)といった彼のレーベルから作品をリリースしたアーティスト、または彼がプロデュースしたアーティストのなかに、自分のフェイバリットアーティストが多い。BEASTIE BOYS、PUBLIC ENEMY、SLAYER、DANZIG、UNIDA(American Recordingsと契約するも作品はリリースされずじまい)、THE BLACK CROWES、FLIPPERS、GETO BOYS、LORDS OF ACID、MASTERS OF REALITY、SKINNY PUPPY、GOD LIVES UNDERWATER、WOLFSBANE、そしてSYSTEM OF A DOWN。さらにLINKIN PARK、SLIPKNOTと挙げてたら枚挙にいとまがないくらいだ。

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