【2020.11.18更新】
RECONSIDERATION(再考論)第3回で取り上げた
“笑うスカコア大王”ことTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES
(https://grindhouse.site/reconsideration-part3-themightymightybosstones/)。かつて心底大好きでホントによく聴いた。彼らがもっとも勢いづいてたのは1993年から1997年頃と勝手に思ってるんだけど、その頃はまだGrindHouse magazine創刊前で、なかなか自分が思うように取材したり記事掲載したりすることができなかった時期だった。で、ようやくディッキー・バレット(vo)へのニューヨークでの対面取材が実現し、GrindHouse magazineに掲載できたのは2000年夏前のことだった。LIMP BIZKITのフレッド・ダースト(vo)表紙の創刊号を出した版元より自ら進んで身を引き(創刊号を“幻の~”と形容する理由はここにある)、新しい版元を決め、そこでのリニューアル創刊を目指す準備号フリペに掲載した。
Interview & Written by Hiro Arishima
Photo by Joseph Cultice
オレはただの男でロックスターにはなれないと、スカコアの帝王が恥ずかしげにつぶやく!
前日のお酒がちょっと残ってる風だけど、言いたいことはきっちり喋り倒したのは、THE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES(TMMB)のフロントマン、ディッキー・バレット。前作『LET’S FACE IT』(邦題『ガンとばし!』/1997年)の大ヒットで、すっかり“売れたバンド”になった事実をちゃんと受け止めていながらも、決して気取らず、常に素のままで音楽を楽しんでる、彼のまっすぐで純粋な人柄が見え隠れする。“スカコア界の笑う帝王”の名の通りっていうのがウレしいところ!
ーー今回の新作『PAY ATTENTION』(邦題『全員注目!』/2000年)を作ってみてどんな感じですか?
ディッキー「もう、100万ドルの気分だね。これまでにないくらい時間をかけて作ったんだけど、作業を始める前に“オレたちができるベストなサウンドはなにか、みんなはどんな音を聴きたいのか”って考えた。でももちろんそれ以上に、自分たちがどんなサウンドを作りたいかが重要なんだけどさ。ここアメリカでは、オレたちの曲が流れ始めたのは、前作からだった。おかげで、突然人に知られるバンドになった。正直言って最初はビビったよ。だけど、そんなビビりは吹き飛ばし、新作を作った。これはオレたちを応援してくれてる、みんなへのプレゼントなんだよ」
ーー長いこと地道に活動してきたバンドが突然成功したことで、なにか変わったことってあります?
「いいや。オレの知ってる限りでは世界中で200万枚以上売れたらしいけど、ちょうどあの頃って、スカの要素を取り入れたサウンドがトレンドになりつつあった時期だったからさ。あの成功で失ったものなんてないし、オレたちはオレたちの音楽を気に入ってくれてる人たちのことを考えてる。オレたちが楽しんで作った音楽を他の人が喜んでくれるのは、本当に最高の気分なんだよ」
ーーでもやっぱり売れるってイイですよね?
「自分で“アーティスト”っていう言葉を使うのは恥ずかしいんだけどね。でも、アーティストが作ったものに対して、“これはイイ!”っていうみんなの言葉の方が、お金なんかよりも何倍も何倍も価値があるものなんだ。みんながオレたちの音楽が好きだ、っていう気持ちがあるからこそ、オレたちはリッチな気分になれるんだよ。人と音楽を分かち合えることこそが、スゴく価値のあるものなんだ。オレの言ってる意味、わかってくれるかなあ。そりゃ、今じゃ車を買うお金もあれば、ボストンに家も買ったよ。だけど、またビンボーに戻る心の準備はできてる。今までずっとビンボーだったんだから、生活のために一生懸命働くこともよく知ってるしね。金なんてなんでもないんだよ。このバンドの一員でいられること、そこから生まれる喜びや、たくさんの友達のことを考えると、オレは世界一のリッチマンなのさ!(笑)」
ーーセールス200万枚という数字からすると、乱暴に言えば、ある種“ポップスター”じゃないですか。そうすると、どこへいくのにも、イヤでも人の目があると思うんですけど…。
「うん、言いたいことはわかるけど、オレにはポップスターにもロックスターにもなれないよ。もしもこれでオレがそんな気分で地元に戻りでもしたら、オレと一緒に育ってきたサウスボストンの友達に“おめえ、何様だと思ってやがる!”ってボコボコにされちゃう(笑)。ものスゴく大変な仕事を一生懸命やって、毎日汗水流してるヤツらばっかなんだぜ。それに比べたらオレなんか、夢にまで見た生活を実際に送れてるんだから、毎日毎秒感謝してる。オレは自分たちで作った音楽をパフォーマンスできるようになった、ただの男なのさ」
ーー新作収録曲のなかで過去あまりなかったようなタイプの曲がありますけど、前作と比べて幅が広がったっていう感じですか。
「そうだね。オレたちみたいに長~いこと活動してるバンドが恐れてることって、自分たちがやってきたことを繰り返すことなんだ。TMMBがTMMBをやる、ってこと。だから、作品を作るたびになにか違ったことを、ほかになにができるかって、いつもそんな調子さ。クッキーの型で押したような、同じことを繰り返すなんてオレたち自身イヤだからね、絶対に」
〈追記〉
GrindHouse magazineは基本、A4サイズだ。ただ、このリニューアル創刊準備号に限り、B5サイズで発行した。よって記事の文字数はA4サイズのそれより少ない。だいたい2/3ぐらいだ。少し記事が短く感じるだろうけど、そういう理由からだ。
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