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【2020.10.13更新】

ここしばらくはご無沙汰しちゃってるけど、かつては頻繁に連絡を取り合ってたKMFDMのサシャ・コニエツコ(vo,programming)。心底いい人で、紳士だ。たくさんたくさん協力していただいた。先に私的Tシャツコレクションを公開したので(https://grindhouse.site/t-shirt-museum-part21-kmfdm/)、続いて2011年9月30日発行のGrindHouse magazine Vol.68に掲載したライヴリポを再公開する!

文・宮原亜矢
写真・マイカ・スミス
August 7, 2011 at Belly Up Tavern, San Diego, California

通算17枚目の新作『WTF?!』(日本盤未発売)を引っ提げ、8月いっぱいを北米ツアーしたKMFDM。幕開けのシアトルから17日連続という強行日程を行ったが、まさかのロサンゼルス公演のキャンセル。一体なにが?ともかく彼らのライヴを見逃すまいと、車で約2時間半かけてサンディエゴ公演へ向かった。到着すると、開場を待つファンの列から少し離れた関係者入り口前のベンチに腰掛け、電話中のサシャ・コニエツコを発見。何度も会ってる同行カメラマンのおかげで、なんとかサシャ自ら会場側に頼んで取材パスを用意してくれたばかりか、ルチア・シファレリ(vo, key)とツアーバスのなかへ案内してくれた。「日本語で書いてあるからもちろん読めないけど、GrindHouse magazineがいつも応援してくれていることは知っているよ」と、ロシアで買ったというウォッカに自ら唐辛子を漬け込んだものを、冷蔵庫から取りだし、我々に振る舞ってくれたサシャ。2歳半の愛娘にキュウリの皮を剥いて食べやすくカットするルチアの姿を垣間見ながら、気になっていたロス公演キャンセルの真相について聞いてみると、主催者側の宣伝不足で、彼らのライヴならば集まるはずのチケットがさばけずにいたことで、キャンセルを決断せざるを得なかったという、彼らにとって不快極まりないものだった。ちなみに、ロス公演を行う予定だった8月6日をオフにすることなく、アリゾナ州フェニックスでフリーライヴを行ったところ、開場1時間前に500人を超える人が集まっていたとのこと。胸を撫で下ろすというか、それこそKMFDMの人気に見合うリアクションだと知った次第だ。それだけに大都市ロス公演のキャンセルは多くのファンにとって残念で仕方のないことだ。
そんなわけで、親切で誠実なサシャも、美しくしとやかなルチアも、いざステージとなれば一変!漆黒の闇からジュール・ホジソンのギターのフィードバックと、アンディ・セルウェイの鋭利なドラムが打ち鳴らされると、一瞬の間を置いてサシャのシーケンサーが鳴り響く。それとときを同じくして、暗闇にストロボが炊かれ、サシャとルチアを中心とした5人の姿を映し出した。つい先ほどまで、あんなにも親近感を持って接してくれたことが、夢だったかのように感じた。それは、ルチアがボンデージ、サシャか優しい瞳を封印した千棟拭く姿だから、ということではもちろんなく、インダストリアルの帝王としての誇りが容易に近づけないほどの強さで放たれてて、そのクールさや妖しさと激情が神々しいからだ。『WTF?!』から先行シングル曲“Krank”で口火を切り、そのあとも曲順こそ違うが全11曲中8曲を立て続けに披露。27年のキャリアながら、常に最新作こそが最高傑作だという彼らの自負を感じた。しかも、アルバムから感じていた重厚なグルーヴは、期待通り彼らのライヴにすばらしい躍動感を与えている。静と動のコントラストがくっきりとした“Lynchmob”から、KMFDMのダンサブルなナンバー“Take It Like A Man”にかけての流れは、彼らのライヴの表情の豊かさを凝縮してて悦に入ってしまうほどだった。妖艶に身体をくねらせ観客を挑発するルチアに多くの男性客が歓喜の声を上げていたのは言うまでもないだろう。“A Drug Against War”から口火を切った後半のキラーチューンのオンパレードは、2度目のアンコールラスト“Godlike”まで、極上のサウンドに酔いしれた観客たちの熱温を下げさせることはなかった。「さすがKMFDM!」を何度となく実感させられた、最高の夜となった。

以下は当日のセットリストだ。

01.KRANK
02.AMNESIA
03.COME ON-GO OFF
04.REBELS IN KONTROL
05.LYNCHMOB
06.TAKE IT LIKE A MAN
07.SPECTRE
08.DYSTOPIA
09.A DRUG AGAINST WAR
10.LOOKING FOR STRANGE
11.POTZ BLITZ
12.ATTAK RELOAD
13.TOHUVABOHU
14.BAIT & SWITCH
15.HAURUCK
〈ENCORE〉
01.D.I.Y
02.MEGALOMANIAC
03.WWⅢ
〈ENCORE 2〉
01.DAY OF LIGHT
02.GODLIKE

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