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【2021.05.10更新】

(有島博志)“笑うスカコア大王”ことTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESが通算11枚目の新作『WHEN GOD WAS GREAT』(日本盤未発売)を発売した。Epitaph Records傘下にあるRANCIDのティム・アームストロング主宰レーベル、Hellcat Recordsへの移籍第1弾だ。
それを記念し、通算7枚目『A JACKKNIFE TO A SWAN』(日本盤未発売)発売タイミングで掲載したインタヴュー記事を再公開する!

2002年9月30日発行GrindHouse magazine Vol.14

text by Aska Gonda

スカコアの創始者BOSSTONESがインディーで再出発!通算7枚目の強力な新作をリリース!!

日本のスカコアファンにも深く敬愛されるスカコアのベテラン、THE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES。2000年に発売された『PAY ATTENTION』(邦題『全員注目!』)を最後にメジャーのMercury Recordsを離れ、インディーパンクロックレーベル、Side One Dummyへ移籍して心機一転、強烈にカッコいい新作『A JACKKNIFE TO A SWAN』を発売。テナーサックスのティム・バートンに電話で話を聞いた。

ーー今年のWARPED TOURは、全公演に出演してたでしょ?
「そうそう、楽しかったよ。45公演だっけ? 毎日が本当に楽しすぎたね。さすがに終わったときには、お楽しみはもうしばらくいいやって気にもなったけど(笑)。でも、観客も最高だったよ。主催者側は不景気と今の政治的情勢を考えて、動員数が減るのを覚悟してたらしいんだけど、今年は逆に増えたんだって。通常ラインナップには、パンクロックだけじゃなく、WEEZERとかポップ系やミクスチャー寄りのビッグバンドを織り混ぜるんだけど、今年はBAD RELIGIONとかNOFXとか、パンクロック系のバンドで埋め尽くされてたから、パンクロックキッズがこぞって参加したんだろうな」
ーー40度近い炎天下で、全員黒いスーツ姿だったけど、あれは相当暑いんじゃない?
「よく言われるんだけど、サマーフェスはどう転んでも暑いもんだから、全然気にしないよ。スーツを着るっていうのは、いわばオレたちの仕事の一環だと思ってるし」
ーーでも、特にベン(・カー/dancer)なんて汗びっしょりだったから、気の毒で。
「まあね。でも、ベンがTシャツ短パン姿で踊ってるのを見続けるのもいやだろ?(笑) Tシャツを着てたってどうせ汗をかくんだ。クールに見えた方がよっぽどいいよ」
ーーWARPED TOURでの新曲のウケもスゴくよかったし、新作も調子よさそうだけど、レーベルを移籍したでしょ?なにがあったの?
「Mercury側がバンドへの興味を失ったというのが、主な理由だね。会社自体が買収だなんだで激変し、スタッフも総入れ替えになった上に、1997年発売の『LET’S FACE IT』(邦題『ガンとばし!』)が大ヒットした頃と違って、スカコアのシーン自体がメインストリームから離れてアンダーグラウンドになってるし、それはしょうがないと思ったから、お互い合意のもとでレーベルを去ったんだ。会社の事情で左右されるより、パンクロックを理解してくれ、信頼できるインディーレーベルとやっていきたいなと思ってさ。Side One Dummyはスゴくエナジェティックなレーベルで、スタッフのことも長く知ってるし、レーベルのオーナーとは一緒にツアーしたこともある仲なんだ。だから、スゴくやりやすいよ」
ーーいいレーベルが決まり、ついにメンバーチェンジもあったみたいで。
「そう、トロンボーンのクリス(・ローズ)と、ギターのローレンス(・カッツ)という、新メンバーが加わった。2人ともいろんなバンドを渡り歩いてきた才能あふれるプレイヤーだよ。前作リリース後間もなく加入したから、もう2年近く一緒にやってきてることになるけど、2人ともスタジオに入った経験がなかったから、レコーディングは安定してたわけではなかった。それでも、新作はすばらしいアルバムになったよ」
ーーレーベルの移籍と、ラインナップの変更がすべての要因かはわからないけど、前作がバラエティに富んだ作風だったのに対し、新作はスゴくエナジェティックで今まで以上にパンクロックを感じる、パワフルな仕上がりになってるよね。
「ありがとう!自分でもスゴく気に入ってる自慢作なんだ。今まで以上にパンクロックっぽいっていうのは、別に狙ってやったことではないけど、確かに新しいレーベルに移って気分がリフレッシュしたというのはあるね。でも、一番デカいのは、ローレンスの貢献だと思う。今までBOSSTONESの曲作りは、主にディッキー(・バレット/vo)とジョー(・ギットルマン/b)と、前のギターのネイト(・アルバート)の3人で進めてきたんだけど、今回は新ギタリストのローレンスがけっこう曲を書いたんだ。彼にはスゴく才能があるし、彼のおかげで雰囲気もずいぶん変わったんじゃないかな。もちろん、いい方向に。個人的には、パンキッシュというよりは、今回はスゴく生っぽいサウンドが出せたと思ってるんだけど」
ーーそれもあるよね。今まで以上にダイナミックで、ちょっとROCKET FROM THE CRYPTみたいというか、スカコアという自分たちのルーツに戻りつつも、前進してる…。
「そうそう、特に今回は自由を謳歌できたというか、今まで以上に楽しみながら作れたんだ。そういうポジティヴなヴァイブが作品に反映されたのかも。9月11日の出来事で暗いムードになったこともあったし、リリックのなかにはあの事件(対米同時多発テロ)を暗喩する表現もあるかもしれない。でも、それを乗り越えられるだけのヴァイブがオレたち全員にあったと思う」
ーー今はカナダツアー中みたいだけど、今後の予定は?
「イギリスを中心にヨーロッパを回って、その後は全米ツアー。それから少しだけ休みをとって、クリスマスには地元ボストンで毎年恒例のイベントがあるからその準備をして、年明けには南半球や日本にいきたいと思ってるよ。新作は今まで以上の自信作だから、いろんな人たちに聴いてほしいし、とにかくツアーを続けないとね!」

(有島博志)以下、余談なのだけど、“RECONSIDERATION(再考論)”第3回で、THE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESを取り上げてる( https://grindhouse.site/reconsideration-part3-themightymightybosstones/   )。そこでも触れてるけど、かつてここのインタヴュー相手のティム・バートンとは、手紙のやり取りを数回する“文通仲間”だった(笑)。彼はもとより、バンドとはもうン十数年会ってない。来日してほしいな…。

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