【2021.12.01更新】
文・有島博志
前回の更新の続きだ(https://grindhouse.site/reconsideration_part9_willhaven/)。
1990年代初頭から2000年から数年間のUSロックシーンはホントにスゴかった、と今つくづく思う。しかし、あまりにも魅力的なバンドが多すぎて、追いついていけない、いち音楽メディア人としてきちんとサポートできなかったバンドが当時、いくつもあった。今思い返すと、バンドの“旬の時期”を逃してしまったりとか、バンドがもう解散してしまったりとかがあったりして、ときに“後悔”すら覚えることがある。前回のWILL HAVENもそうだけど、今回のTHE CASUALTIESもそうだ。改めて再検証、再考してみたい。
THE CASUALTIESはニューヨーク産の4人組。活動キャリアは長く、30年を超える。2004年初頭のある日、JPレーベルの担当者より「ストリートパンクです。来日予定もあります」と紹介されたのが、バンドにとって通算5枚目となるフルアルバム『ON THE FRONT LINE』だった。ストリートパンクと言われイメージしたのが、RANCID、TOTAL CHAOS、SWINGIN’ UTTERSらだったのだけど、聴いてみると音楽的に想像とはかなり違ってて、まるでカウンターパンチを喰らったような強烈な衝撃を浴びた。
ド頭っからブッ飛ばされた!「ぇ、ストリートパンク?」って感じで、ギターリフの刻み方はもう、スラッシュメタルのそれで、ブキバキ言わせながら滑走するベースランにわかりやすいメロディとシンガロング系コーラスなどがひとつになってたたみかけてくるサウンドは、攻撃力、破壊力満載だ!そしてなによりも勢いに満ち満ちてて、私的ストリートパンクのイメージを木っ端微塵にされた。この作品から1曲“Tomorrow Belongs To Us”のPVも製作されてる。
『ON THE FRONT LINE』で初めてTHE CASUALTIESを知ったので、彼らのサウンドは前からそうなのか?と少し遡ってみた。『ON THE FRONT LINE』の1枚前の4thフルアルバム『DIE HARDS』(2001年)を聴いた。
音楽的方向性は『ON THE FRONT LINE』とほぼ同一だけと、スラッシー度という点では、『ON THE FRONT LINE』の方が断然上だ。『DIE HARDS』からは1曲“Get Off My Back”のPVが製作されてる。
かつてこういうことがあった。UKハードコアパンクのハードロック/メタル傾倒現象だ。たとえば、COCKNEY REJECTSの4thアルバム『THE WILD ONES』(1982年/日本盤未発売)をプロデュースしたのは、なんと当時UFOのピート・ウェイ(b/故人)だった。とにかくピートがプロデュースしたことに驚いたけど、音楽的にもハードロックに寄ってる。DISCHARGEもそうだ。2ndアルバム『GRAVE NEW WORLD』(1986年)で突如、ヴォーカルのケヴィン・モリスがかなりのハイトーンヴォイスになり、サウンドもハードロックに傾いてる。そして極めつけは、THE EXPLOITEDの7thアルバム『BEAT THE BASTARDS』(1996年)だ。もう完全にスラッシュメタル化してて、ガンガン攻めたててくる。めちゃくちゃカッコいい!THE CASUALTIESもそうした先達から刺激されたんだろうか。
『ON THE FRONT LINE』に続く6thアルバム『UNDER ATTACK』(2006年)。『ON THE FRONT LINE』よりスラッシュ度は抑えられたぶん、ブ厚いシンガロング系コーラスが増量されてる。
参考のために、彼らがアルバムデビューする前の1995年にリリースした4曲入り7インチEP『A FUCKIN’ WAY OF LIFE』が試聴可だ。音楽的にはもろストリートパンクだ。なお、このEPは、MY CHEMICAL ROMANCEがデビューしたことでも知られるEYEBALL RECORDSからのリリースだ。
スラッシー度は『ON THE FRONT LINE』がもっとも突出してて、8thアルバム『WE ARE ALL WE HAVE』(2009年)以降、作品を重ねるたびに徐々に、しかし着実に薄まっていった。
そんなTHE CASUALTIESだけど、2004年4月にレーベルメイトのFLOGGING MOLLYとともに再来日した。そのとき対面取材と写真撮影を実施した。ここにある1枚は、そのときのものだ。
さらに2005年6月にバンドは再々度来日。福島、浜松、福岡、広島、大阪、愛知、東京と7都市を巡演した。その来日公演と、メキシコツアーの模様を収めた、これまでのキャリア唯一のライヴ映像作品『CAN’T STOP US』(2006年/日本盤未発売)が発売されてる。
バンドが広島を訪れた際、原爆資料館にいってる。そのときのメンバーそれぞれの表情が実に印象的だ。
ちなみに、当時のシンガー、ジョージ・ヘレーラはエクアドル最大都市のグアヤキル生まれの移民だ。作品の収録曲にはスペイン語で歌われてる曲もあり、『ON THE FRONT LINE』のスペイン語ヴァージョン『EN LA LINEA DEL FRENTE』(2005年/日本盤未発売)もリリースされてる。
近日中に再来日時に撮影した写真の数々、そして対面取材を再公開する予定だ。
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